スポーツと突然死

突然死とは、24時間以内の予期しない死亡(交通事故などの外因死を除きます。)のことをいい、年間発症率は、10万人に100人から160人とされています。

突然死発生時の状況を調べると、睡眠・入浴・作業労働などの他にスポーツ中の突然死もあり、その原因や予防について調査研究されています。

活動別突然死の発生率を単純に比較すると、睡眠・入浴・作業労働などの日常活動中に発生することが多いのですが、活動時間の要素を加えて検討すると40から59歳ではスポーツが最も高くなります。

スポーツ種目別の突然死は、40歳未満ではランニングが最も多く、次いで、水泳・サッカー・野球と続きます。

40~59歳では、ゴルフが最も多く、次いでランニング・水泳・スキーの順で、60歳以上では、ゲートボールが最も多く、ゴルフ・ランニング・登山となっています。

どの年代でもランニングが上位にランクされており、原因の究明と予防策の確立が急務となっています。

参考文献:心臓性急死の実態と機序 日本医事新報3579号(村山正博)

我が国のマラソン大会中における過去10年間の心肺停止事例について

大会参加者の男女比は、男性75%、女性25%となっていますが、心肺停止の男女比は、男性95%、女性5%となっており、男性の方が圧倒的に心肺停止に陥る可能性が高いことを示しています。

心停止したランナーの年代をみると40~59歳で全体の50%を占めており、出場種別をみるとフルマラソン18例、ハーフマラソン28例、その他のレースが36例となっています。

40~59歳が全体の50%を占めていますが、日ごろからトレーニングを積んでいるランナーなのか、何らかの理由によりマラソン大会の参加が決まってからトレーニングを開始したランナーなのかはわかっておりません。

また、フルマラソン・ハーフマラソンで心停止を発症するランナーが多いということは、それだけ、その二つのレースが身体に多くの負担をかけているということになります。

参考文献:我が国のマラソン大会における心停止例の分析(国士舘大学 白川透 他)

マラソン大会における心停止の発生頻度

過去10年間においてアメリカで開催された市民マラソン大会に参加したランナー1090万人のうち、心停止となったランナーは59名おり、その割合を見ると10万人あたり0.54人である。

日本では、国士舘大学が同様の調査を行っているが、その結果は、参加者772,876人中16例の心停止が発生しており、人口10万人あたり2.07人となっています。

つまり、統計上、日本で開催される5万人規模の大会においては、心停止ランナーが出ることを示しています。

自分がその一人にならないためにはどのようにしたらいいのでしょうか。

参考文献:マラソン大会における心停止の発生頻度(国士舘大学 白川 透 他)

心停止の原因

心停止の原因は、そのほとんどが心原性(心臓が原因の疾患)であり、30歳未満では肥大型心筋症が多く、30歳以上では虚血性心疾患(心臓を栄養する血管が何らかの理由により閉塞する疾患)が多くなっています。

肥大型心筋症は、遺伝性心疾患であるとともにスポーツマンや運動中の突然死と関連する最大の疾患であり、レース参加前の心電図検査や心エコーを行うことで判明することがあります。

虚血性心疾患は、高血圧や高コレステロールなどが原因の心筋梗塞や狭心症などが一般的ですが、マラソン大会中に発生した心停止は、心臓を栄養する冠動脈の狭窄により致死的不整脈が発症することが多いと考えられており、もともと高血圧などの危険因子を持っている方はもちろんですが、日ごろは病気とは無縁な方も心停止になる可能性があります。

参考文献:スポーツにおける突然死(河合祥雄)

心停止前の自覚症状

心停止となった大会の事前練習での自覚症状は、時々胸痛があるランナー、胸部違和感があったとするランナーもいたようですが、全く症状のないランナーもいました。

自分は健康であると認識している方が多いことが伺われます。

参考文献:マラソン大会中に発生した心原性院外心停止の検討(東京都立墨東病院 黒木識敬 他)

心停止ランナーのその後

過去10年の心停止例のその後を見ると、約半数強が死の淵から生還されています。

生還された方たちの情報を考察すると、近くにいた人が心臓マッサージを実施することによって生存する確率が上昇し、また、近くにAEDがあり、かつ、電気的除細動の適応であればさらに生還する確率は上昇します。

参考文献:我が国のマラソン大会における心停止例の分析(国士舘大学 白川透 他)

アスリートの皆さんへ

科学的な根拠を基にマラソン大会等に出走するランナーの突然死の発生頻度、原因などについてご紹介してきました。

マラソン大会における突然死の原因の多くは、マラソンランナー特有の心筋虚血の可能性が高く、自覚症状は、ある方もいればない方もいることから、どのような方にも起こりうることだということが分かりました。

また、生還された多くの方たちは、近くにいた方から心臓マッサージを受け、AEDによる電気的除細動が行われていたということもわかり、改めて心肺蘇生法の大切さが浮き彫りになりました。

私の救護活動の経験則から言わせていただくと、練習不足の方は、足の痛みなどで救護を求めてきますが、練習をしっかり行っていそうな方は、脱水になって救護を求めてくることが多いように思います。

自分の体調、走力そして天気を把握して無理のないレース運びを行うことが突然死の予防の一つであるといえそうです。

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