スポーツ時はアミノ酸の需要が大きくなります。アミノ酸はたくさんの種類があるので、それぞれの働きを知っているとより栄養補給の本質を理解できます。今回はアスリートの体やパフォーマンスをサポートするアミノ酸について、その働きや効果についてまとめました。

アミノ酸と言えばBCAA?

アスリートにとって、コンディションを整えるためにアミノ酸の摂取はとても重要です。筋肉で代謝され、直接エネルギー源となるBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)は、タンパク質の分解抑制や疲労回復などを目的として摂取しているアスリートの方もいるでしょう。

スポーツに欠かせないアミノ酸と言えばBCAA、というイメージもありますが、それ以外のアミノ酸も、体調を整えたりストレスを軽減したりする効果があることがわかっています。今回はBCAA以外のアミノ酸について、その効果を調査しました。

グルタミンの働き

グルタミンは筋肉中に貯蔵されているアミノ酸ではもっとも多く、約6割を占めています。筋肉の維持やグルコース合成、免疫細胞のエネルギー源になるなど、さまざまな生理機能を持っているアミノ酸です。グルタミンは強度の高いスポーツをして身体的な負荷がかかったり、精神的なストレスを抱えたりしているとその需要が増大し、筋肉中からグルタミンが放出されます。

つまり激しいスポーツを続けているとグルタミンが筋肉中から流れ出してしまい、筋力低下の原因にもなるのです。加えてマラソンのレース後には風邪をひきやすくなる、という経験がある方もいるかと思います。これは免疫細胞のエネルギーとなるグルタミンが不足してしまい、免疫細胞が本来の機能を果たせなくなるためだと考えられています。

グルタミン摂取の効果

ではグルタミンをサプリメントで摂取すると、アスリートのコンディションにどのような効果があるのでしょうか。

マラソンレース後に5gのグルタミンまたはプラセボを投与した実験があります。するとレース後7日間に風邪をひいた被験者がプラセボ群では81%であったのに対して,グルタミン摂取群では49%と有意に少なかったと報告されています。

さらに水や熱に弱いグルタミンを安定化させた小麦グルテン加水分解物(WGH)を用いた実験では、24時間走における血漿中のグルタミン濃度について評価が行われました。24時間走は食事・休憩は適宜取りつつ、24時間後のフィニッシュまで走り続けるもので、被検者は競技中1時間ごとに3gのWGHまたはプラセボを摂取しました。

両グループの血漿中グルタミン濃度は、プラセボ群で時間が経つにつれ減少したものの、WGH摂取群ではほぼスタート前の濃度を維持していました。さらにプラセボ群は8名中6名がリタイアまたは1時間以上の休憩をしたのに対し、WGH群では8名中7名が休むことなく走り続けたのです。このパフォーマンスの差については、グルコース合成の原料となるグルタミン濃度を維持したことによって、レースによる血糖値の低下を防げたためではないかと考察されています。

スポーツにおけるアミノ酸の使用法とその効果

EAA+アルギニンの効果

では続いて、必須アミノ酸EAAとアルギニンのサプリメントを服用した場合の効果について解説します。

EAAとは

タンパク質合成の原料となるアミノ酸は全部で20種類ありますが、その中で必須アミノ酸(Essential Amino Acids:EAA)と呼ばれるアミノ酸は、体内で合成できないため食事やサプリメント等での摂取が必要です。EAAにはBCAAをはじめとして、以下の9種類が含まれます。

<必須アミノ酸>

バリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・メチオニン・フェニルアラニン・トレオニン(スレオニン)・トリプトファン・ヒスチジン

BCAAは中枢性疲労(脳が疲労を感じる状態)の原因物質だと考えられているセロトニンの合成を抑制し、疲労によるパフォーマンスの低下を防ぐ働きがあると言われています。BCAAを含むEAAでも、同様の効果が得られるというわけです。それならBCAAでいいのでは?と思われるかもしれませんが、EAAは必須アミノ酸をバランス良く含んでいるため、コンディションを整えるための栄養素としてEAAが注目されているのです。

アルギニンの働き

アルギニンもEAAと同じくタンパク質の原料となるアミノ酸です。一酸化窒素(血管を拡張させる物質)の原料となるほか、成長ホルモンの合成促進、免疫力向上などの働きがあります。さらに激しい運動時には体内でアンモニアが生成され、これも中枢性疲労の原因物質の一つではないかと考えられています。アルギニンはアンモニアを解毒して尿素に変換するのに必要なアミノ酸で、中枢性疲労を回復させる効果があります。

EAA+アルギニンは持久パフォーマンスを向上させる

2018年に発表された論文で、アスリートがEAAとアルギニンを含むサプリメントを摂取した場合の効果について検討した研究があります。この研究の中で、被検者はサプリメントあるいはプラセボを摂取し、その20分後に以下の3つの実験をしています。

①疲労により棄権するまで6秒ごとに0.1km/hずつ速度を上げるランニングテスト:棄権するまでのタイムの長さを計測

②ランニングに3回の跳躍テスト:2回目以降の跳躍で、1回目の到達点からどれだけ減少したかを評価

③ストループテスト:緑色で「赤」と書かれた文字の色(または文字の意味)を尋ねるなどのテストを行い、反応時間の差から集中力や注意力を評価

①のテストでは、プラセボ群の平均タイムは16.3分だったのに対して、サプリメント摂取群では18.6分と、2分以上も長く持久トレーニングを続けることができました。さらに②と③のテストでも、サプリメント摂取群は跳躍の減少率が少なく、プラセボ群と比較して集中力も有意に高かったとわかりました。3つのテスト全てで、サプリメント摂取群のパフォーマンスが高かったことは驚くべき結果です。

Study on the essential amino acid’s supplementswith absorption patterns in the improvement of the performance for sportspeople: GFS AMINO

まとめ

今回はBCAA以外のアミノ酸の効果について論文を調査しました。トレーニングやレースなど体に大きな負荷がかかっているときは、アミノ酸の需要が増えます。コンディションや筋力の維持のためには、必要に応じてアミノ酸系サプリメントを補給するとよいでしょう。効果的なアミノ酸系サプリメントの種類や摂り方について、今後もさらなる研究の発展が期待されます。

ライター 大月萌

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