抗酸化という言葉をよく耳にするようになりました。抗酸化とは体内に発生した「活性酸素」が細胞にダメージを与える「酸化」に対抗する能力です。元々人間の体内にはその抗酸化能力が備わっていますが、その能力が活性酸素による酸化に追いつかなくと、血管や細胞に悪影響が起こり、様々な疾患や老化現象の原因になることがわかっています。

ランナーにとって都合の悪いことに、活性酸素は過度な運動や紫外線を浴びることによっても作られてしまいます。つまり、長時間に渡って激しいランニングを屋外で行うことは、一面では活性酸素をせっせと作り出しているとも言うことができます。ランナーが必ずしも健康で長命だとは限りませんが、この活性酸素が主な原因なのかもしれません。

ビタミンCやビタミンEなどの栄養素には抗酸化を助ける効果があるとされていて、多くのサプリメントが抗酸化効果を謳っています。今回はそうした抗酸化サプリメントがランナーにとってどのような意味があるかについて調べてみました。

抗酸化サプリメントは持久力を向上させない

持久力トレーニングを行っているアスリートがビタミンCやビタミンEを組み合わせた抗酸化サプリメントを摂取すると、パフォーマンスにどのような影響があるかを調べた研究があります。

Antioxidant supplementation does not alter endurance training adaptation

https://europepmc.org/abstract/med/20019626

この研究は若いアスリート21人を対象に、1グループ(11人)には抗酸化サプリメントを摂取させ、別のグループ(10人)には偽薬(プラセボ)を摂取させ、12週間に渡って週5回の高強度の自転車トレーニングを実行させ、期間前後の様々なパフォーマンス指標を比較したものです。

結果は、2つのグループ間に、最大酸素消費量、最大出力、乳酸閾値、筋肉内のグリコーゲン濃度、クエン酸シンターゼ、およびβ-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ活性など多岐に渡るパフォーマンス指標で向上した数値に大きな差は認められませんでした。

結論として、この研究では抗酸化サプリメントは持久力向上には役に立たないとしています。身も蓋もない情報ですが、2つのグループとも12週間のトレーニング期間後には上に挙げた数値は(抗酸化サプリメントを摂っても摂らなくても)全て向上したとのことです。

むしろ抗酸化サプリメントの摂取は持久力を下げる

別の研究では、ビタミンCを投薬するとかえって持久力を低下させてしまうという報告もされています。

Oral administration of vitamin C decreases muscle mitochondrial biogenesis and hampers training-induced adaptations in endurance performance.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18175748

この研究がユニークなのは、人間と実験動物(ラット)の両方を対象に同じような実験を行なったことです。

人間は14人の健康な男性(27~36歳)を対象に、8週間のトレーニング期間中、そのうちの5人に毎日1グラムのビタミンCを経口による投与を行いました。

動物実験では、24日のラットのうち12匹にビタミンCを与え、3~6週間の強制的な運動を行わせました。

その結果として、どちらもビタミンCを摂取したグループは筋肉のミトコンドリア生合成が減少して、持久力パフォーマンスに関わる運動による刺激への適合能力が悪化ししたということです。

エクササイズこそが抗酸化能力を増やす

それでは抗酸化を高めるにはどうしたらよいのでしょうか? 英国ラフバラー大学・客員教授であるアスカー・ジェケンドラップ氏はエクササイズこそ体内に元々備わっている抗酸化能力を向上させる最良の方法なのだと述べています。

Exercise is the best antioxidant

http://www.mysportscience.com/single-post/2018/06/10/Exercise-is-the-best-antioxidant

ジェケンドラップ氏はアスリートが抗酸化について知っておくべき6か条として以下のようにまとめています。

  1. トレーニングを行う上で、通常のバランスが取れた食事以上の抗酸化サプリメントが必要だとする科学的根拠はない。
  2. 抗酸化サプリメントは極端に食事が制限させているか、バランスが偏っている場合にのみ補助的効果はある。
  3. 抗酸化サプリメントが回復を助ける科学的根拠はない。
  4. 抗酸化サプリメントがパフォーマンスを上げる科学的根拠はないか、非常に少ない。
  5. 抗酸化サプリメントの過剰摂取はトレーニングへの適合を低下させる科学的根拠がある。
  6. 野菜と果物を含んだバランスのよい食事を心がけるべき。抗酸化サプリメントはかえってトレーニング効果に悪影響を及ぼすことがある。

日本の厚生労働省が一般向けに発信している以下のウェブサイトでも、抗酸化サプリメントに対して否定的な見解を述べています。

抗酸化物質と健康

http://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c02/02.html

まとめ

プロテインなどの他の栄養素にも言えることですが、どうやら抗酸化には抗酸化物質を含む野菜や果物などの自然食品を摂ることが大切で、サプリメントには頼らないほうが良策という結論になりそうです。

[筆者プロフィール]

角谷剛(かくたに・ごう)

アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。

【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani

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