インターネットの普及も相まって、医薬品やサプリメントは個人が簡単に購入できる時代になりました。しかしそんな時代だからこそ、何気なく購入して服用した市販薬やサプリメントでうっかりドーピングになってしまった、ということも起こりえます。うっかりドーピングを防ぐため、ドーピングに関する基礎知識について解説します。

ドーピングの規定

世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が発行する「世界アンチ・ドーピング規定禁止表国際基準」(以下、禁止表)は毎年1月1日に更新され、その都度変更点があります。2019年の禁止物質に関しては、2019年1月に発行された禁止表を参照する必要があります。以下の情報はすべて、2019年の禁止表に基づく情報であることをはじめにお伝えしておきます。

禁止表の分類

ドーピング検査は大会中に行われる「競技会検査」と不定期に行われる「競技会外検査」があります。WADAではそれぞれの検査に合わせて禁止物質と禁止方法*1を規定しています。禁止表の分類は以下の通りです。

  1. 常に禁止される物質と方法:競技会中も競技会外のトレーニングでも、常に禁止されているもの。
  2. 競技会(時)に禁止される物質と方法:①に加えて、競技会検査の対象となる禁止物質について規定しています。
  3. 特定競技について禁止される物質:該当しない競技の選手であれば、使用しても問題ありません。2019年の禁止表では、陸上競技の該当はありません。

*1)輸血等による血液の操作、尿のすり替え、遺伝子ドーピングの禁止を規定している。

病院で処方される薬や市販薬にも注意が必要

ドーピングと聞くと、男性ホルモンやステロイドなどをイメージされる方も多いかもしれません。しかし風邪や花粉症など、一般的によくある症状で病院から薬を処方されたり、市販薬を買ったりした場合でも、その医薬品の中に禁止物質が含まれている可能性もあるのです。特に注意が必要な医薬品について、以下に一例を挙げます。

  • ・咳止め(総合感冒薬を含む)
  • ・去痰薬
  • ・鼻炎、花粉症の治療薬
  • ・高血圧治療薬(特に利尿成分を含む合剤)
  • ・気管支喘息治療薬
  • ・インスリン

なお、禁止物質が含まれているかどうかはgrobal DROで検索できます。こちらも合わせて活用してください。

漢方薬は原則として服用しない方が望ましい

漢方薬は天然由来の成分から作られる医薬品で、西洋医学の医薬品と比べると副作用も少なく安心、というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。しかしドーピングにおける漢方薬の概念は全く異なります。

例えば漢方薬の成分の中で「マオウ(麻黄)」は競技会検査の対象となるエフェドリンやメチルエフェドリンを含むため、競技会前や競技会中は服用してはいけません。マオウは風邪のひき始めに効く「葛根湯」、熱を下げる「麻黄湯」、鼻風邪や花粉症のときに飲む「小青竜湯」などをはじめとして、多くの漢方薬に配合されています。このほかにも、胃腸薬として使われている「ホミカ」*2、滋養強壮作用がある「カイクジン(海狗腎)」や「ジャコウ(麝香)」*3などの成分も禁止物質です。

ではこれらの成分に該当しなければ問題ないのかというと、そうではありません。漢方薬は薬効を持つ主成分がどの植物に由来するものかはわかっていますが、西洋医学の医薬品のようにすべての詳細な成分が明らかになっているわけではないのです。上記の成分が含まれていないから大丈夫と思っても、服用していた漢方に禁止物質が含まれていることが検査で発覚するという可能性もあります。

よっぽどのことがない限り、漢方薬の服用は避けた方がよいと言えるでしょう。気になる方は、アンチ・ドーピングに詳しいスポーツドクターまたはスポーツファーマシストにご相談ください。

*2)上記②の禁止物質に該当するストリキニーネを含む。

*3)上記①の禁止物質に該当する蛋白同化薬を含む。競技会中でも競技会外でも使用してはならない。

サプリメントに潜む罠

コンディション維持のためにサプリメントを服用している人も多いと思いますが、「サプリメントの成分表示に禁止物質が入っていないから大丈夫」というわけではありません。サプリメントはあくまで食品なので、医薬品と異なり全ての成分を表示する義務がないのです。よって、サプリメントの成分表示だけを見て摂取を判断するのは危険です。特に「筋肉増強」「脂肪燃焼」「美容」「痩身」などを謳っているものや、海外製のサプリメントには注意が必要だと言われています。摂取の前にはスポーツドクターなどの専門家に相談すること、摂取はあくまで自己責任になることを理解しておきましょう。

アンチ・ドーピングとサプリメントについては、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)も注意喚起をしていますので、合わせてご確認ください。

不安な点は専門家に相談すること

一見ドーピングとは関係ないと思っても、禁止物質が含まれている医薬品やサプリメントを服用し検査で陽性となると、ドーピング違反となってしまいます。また治療上、どうしても禁止物質を使用しなければならない場合は申請が必要です。ドーピングに関して不明な点がある場合は、アンチ・ドーピングに詳しいスポーツドクターまたはスポーツファーマシストにご相談ください。

ライター 大月 萌

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