レースでも練習でも、きついランをした後は、誰でも筋肉は疲労し、体力は低下します。その後に適切な休養を挟むことで体力は回復し、結果としてトレーニング前よりランの能力は少しずつ向上します。これは超回復と呼ばれるメカニズムです。

ここまではほぼ常識と言ってもよいと思いますが、一言で休養と言っても、実際にはいくつかの方法があります。その中で回復するためには何がベストな方法なのかとなりますと、ランナーや指導者の経験や感性に基づく部分が多くなります。

そこで今回は、どのような種類の休養を取るとランナーの回復にもっとも効果的かということについて比較研究した論文を紹介します。

ルール大学ボーフム(ドイツ)のThimo Wiewelhove氏らが中心となって2018年11月に発表した論文です。

Effects of different recovery strategies following a half-marathon on fatigue markers in recreational runners

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6226207/

実験に使われた回復方法の種類

ACT (Active Recovery) – 積極的休養。激しい運動のあとで、軽く体を動かして、疲労物質を除去しやすくする。実験では被験者はゆっくりしたジョギングを15分間行った。

CWI (Cold Water Immersion) -冷水風呂、あるいはアイスバス。実験では被験者は水温15度に15分漬かった。

MAS (Massage) – マッサージ。実験では被験者は専門家のスポーツマッサージを20分間受けた。

PAS (Passive Recovery) – 消極的休養、あるいは完全休養。実験では被験者は15分間ベンチに座って、何もしなかった。

実験の内容

同一のハーフマラソン・レースを走った46人の男性市民ランナー(平均年齢30歳、平均フィニッシュタイム1時間42分)を4グループに分け、それぞれのグループにレース直後15分間を上のACT,CWI,MAS,PASのいずれかの方法のみで休養を取ってもらい、レース前と24時間後の客観的な体力指数の変化と主観的な疲労度合いを比較したもの。

実験の結果

市民ランナーたちは全員ハーフマラソンのレースから24時間たったあとでも、多かれ少なかれ疲労を感じていました(それはそうでしょうね)。

ACT(積極的休養)のグループはクレアチンキナーゼの血中濃度、テストステロン・レベル、主観的な疲労回復度において最も低い数値でした。

CWI(冷水風呂)のグループは垂直跳びの能力が落ちたものの、主観的な疲労回復度と筋肉痛の緩和では最も高い数値でした。

MAS(マッサージ)のグループも主観的な疲労回復度と筋肉痛の緩和では CWIとほぼ同じの高い数値でした。

PAS(完全休養)のグループはほとんどの数値でCWI(冷水風呂)とMAS(マッサージ)を下回りました。

論文執筆者の結論

上の実験結果を踏まえて、論文ではCWI(冷水風呂)とMAS(マッサージ)を推奨しています。PAS(完全休養)は回復効果が低く、ACT(積極的休養)はかえって逆効果になることがあると警鐘を鳴らしています。

筆者の考察

この論文は積極的休養を否定しているという点で、意外に感じる人は多いと思います。歴史的に見れば、以前は完全休養が主流で、近年になって積極的休養を勧める説が多数派になってきたという経緯があります。

但し、この実験はレース直後に4つの回復方法からどれか1つのみを選択したものですので、現実にレースを走ったランナーの行動とは必ずしも一致するとは言えません。

早い話、筆者はフルマラソンなどを走った後は、まず冷水風呂に入り(CWI)、セルフマッサージをして(MAS)、その後はゴロゴロして(PAS)、翌日は筋肉痛に顔をしかめながら軽いジョギングかウォーキング(ACT)をします。つまり、上に上げられた4つの方法の1つだけをするのではなく、元々すべてを行っているのです。

フルマラソンの筋肉痛を半日で消す回復法の理論と実践

https://sportie.com/2019/01/recovery

まさにあの手この手を使っていますが、このうちのどれかは効果があって、どれかは無意味だったかもしれません。しかしながら、ランナーにとってはトータルで回復すれば、それで充分なわけですので、それぞれが好みと事情に合わせて、回復方法を選択すればよいのではないでしょうか。

[筆者プロフィール]

角谷剛(かくたに・ごう)

 

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