最大心拍数はトレーニングの強度を設定する際に重要な指標になります。例えば、最大心拍数の70~80%ぐらいで高強度のインターバル走を行う、あるいは最大心拍数の60%ぐらいのペースが脂肪燃焼に効果的だ、などという風に使われます。

心拍計が着いたランニングウォッチなどが増えましたので、走っている最中や走り終えた直後の心拍数を把握することは容易になりました。現在の心拍数が最大心拍数の何%ぐらいかで、トレーニングの強度を調整することができるのですが、その前に基準となる最大心拍数の値を知る必要があります。

ところが、最大心拍数とは、つまり限界まで追い込んだ状態の心拍数ですので、その値を正確に測定するのは実際にはかなり困難です。従って、年齢に基づいた計算式によって推定した値を用いることが一般的です。

代表的な計算式―Fox式と田中式

最大心拍数を推測する方法としては、1971年にFox氏が発表した以下の計算式はもっとも有名です。

Fox式: 最大心拍数=220-年齢

あなたが30歳なら、最大心拍数は220-30で、毎分190拍と推測できます。非常にわかりやすく、計算もしやすいため、長い間多くのスポーツの現場でこの計算式が用いられてきました。

このFox式の妥当性に疑問を投げかけたのがテキサス大学オースティン校の田中弘文教授です。現在では田中教授が2001年に発表した下の計算式がFox式より正確であるとする人は多いようです。

田中式: 最大心拍数=208‐0.7×年齢

この計算式では、30歳の最大心拍数は毎分187拍となります。

実際のマラソンランナーで実験

計算式は異なっていても、どちらも年齢を基準にしていることは共通しています。年齢が高くなるにつれて、最大心拍数は下がっていきます。その傾向そのものは変わらないとしても、現実には同じ年齢であっても最大心拍数にはかなり個人差があります。本来なら、個人ごとに実際の最大心拍数を測定するのが最も望ましいのですが、それが出来ない場合は、なるべく誤差が少ないであろう推定値を用いることが次善の策になります。

上の2つの代表的な計算式を、実際のマラソンランナーで実験・検証してみたものが以下の論文です。

Age-Predicted Maximal Heart Rate in Recreational Marathon Runners: A Cross-Sectional Study on Fox’s and Tanaka’s Equations

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2018.00226/full#B17

ギリシャのPantelis氏らが2018年3月に発表したこの研究では、185人のマラソンランナーがボランティアでトレッドミルによる実験に参加しました。そのうち180人のデータが検証に用いられています。実験は1%の傾斜をつけたトレッドミルのスピードを時速8キロからは走り始め、毎分1キロずつ速めていき、ランナーがそれぞれの限界に達するまで行うというものでした。ペースを維持できなくなった時点の心拍数がその人の最大心拍数というわけです。

実験結果

実験では女性ランナーの最大心拍数はFox式より毎分4.8拍低く、田中式より毎分4.9拍低い数値が測定されました。男性ランナーの場合はFox式より毎分2.8拍高く、田中式より毎分1.2拍高くなりました。田中式の方がより実際に近い測定値を導くとの結果から、論文の著者は男性のマラソンランナーは最大心拍数を推測する方法として田中式を用いることを結論として勧めています。

もし自分自身の最大心拍数を測定したいと思うなら、上の実験で使われたトレッドミルの手法は怪我のリスクが比較的少ないように思えますので、試してみてはいかがでしょうか。雨の日や走るには暑すぎる日には、格好の室内トレーニングにもなりますね。

[筆者プロフィール]

角谷剛(かくたに・ごう)

 

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