きついトレーニング、ランナーであればインターバル走やタイムトライアルなどを行った後に、クールダウンとして軽くジョグをする習慣が以前からあります。へたり込んで休んでいるより、軽く体を動かした方が、疲れもとれるし、翌日からの筋肉痛を減らす効果があると信じられてきたからでしょう。

じっとして休むことを受動的(パッシブ)クールダウンと呼び、それと比較して、軽く体を動かすことから能動的(アクティブ)クールダウン、またはウォームダウンを呼ぶこともあります。

今回は、こうしたアクティブ・クールダウンは本当に効果があるのか?と言う疑問について多角的に検証した論文を紹介します。

Bas Van Hooren氏(オランダ)とJonathan M. Peake氏(オーストラリア)が共同で2018年7月に発表した論文です。両氏が既存の多数の研究をまとめたもので、Narrative Reviewと呼ばれる形式です。

Do We Need a Cool-Down After Exercise? A Narrative Review of the Psychophysiological Effects and the Effects on Performance, Injuries and the Long-Term Adaptive Response

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29663142

論文執筆者の結論:3つのキーポイント

  • 多くのアスリートは練習や競技が終了してから1時間以内に5~15分程度の負荷の軽い運動(アクティブ・クールダウン)を行う。その目的は疲労からの回復を促進することにある。

  • 1つの練習または競技が終了した後のアクティブ・クールダウンは次のセッションが同日の4時間後以降にある場合は、スポーツのパフォーマンスを向上させる効果に乏しいことが多い。次のセッションが翌日以降になる場合はさらにその傾向が顕著になる。だが、パフォーマンス以外にいくつかの利点は見られる。

  • アクティブ・クールダウンには長期的な疲労を軽減する効果も怪我を予防する効果もない。

様々な切り口について論じた研究の一覧

下はアクティブ・クールダウンの効果があるかどうかの研究を、生理的、心理的、パフォーマンス、そして長期的な分野に分けた一覧です。欄内の数字は研究の数を示します。顕著な効果が認められたもの(緑)、大きな効果もないが、悪影響もないとしたもの(青)、かえって逆効果があるとしたもの(赤)に分けてあります。

筆者の考察

一覧を見ると、中央の「影響なし」欄に最も多くの研究数があるのが明らかです。唯一、一番上にある「血中乳酸の除去」だけははっきりとアクティブ・クールダウンの効果が科学的に証明されているようです。 ところが、この乳酸という物質、以前は疲労の元凶と見られていましたが、最近の研究では乳酸はエネルギー源であることが知られてきました。それならば、血中乳酸値を下げる効果が必ずしもランナーにとって良いこととは言えず、アクティブ・クールダウンを行う根拠にはなり得ない気もします。

これらを素直に解釈すると、アクティブ・クールダウンはやってもいいけど、良くも悪くも、あまり意味はないよってことになりそうです。

やってもやらなくても同じなら、きつい練習の後でバテバテになった状態で、わざわざジョグをしなくてもよいから、横になって休んでいるか、アイスクリームでも食べていたらいいよ、なんてアドバイスしたら、多くのランナーに感謝されそうです。

クールダウンが習慣になっている人は、完全にやめてみるか、あるいは別のやり方を試してみて、自分自身にどのような変化があるかを観察してみてもよいかもしれません。逆に今までクールダウンの習慣がなかった人は、取り入れてみてもよさそうです。効果は無いかもしれませんが、大きな逆効果も無いということであれば、後はランナー個人に合うか合わないかの問題だと思いますので。

[筆者プロフィール]

角谷剛(かくたに・ごう)

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