ランニングに関する話題の中から科学的根拠に基づいた学術論文の内容を紹介するシリーズ。今回のテーマは「カフェイン」です。

カフェインと言えばまず頭に浮かぶのはコーヒーです。コーヒー以外でも、カフェインは緑茶やチョコレートにも豊富に含まれていますし、各種のエネルギードリンクにもカフェインを含むものは多くあります。

コーヒーは過去においてはあまり体に良くないものとされてきましたが、最近では脂肪燃焼を助長するダイエット効果や血行促進効果など健康面への様々な作用が見直されてきています。

ここでは、1日に常識的な量(カップ数杯程度)のコーヒーを飲むとランナーにどのような影響があるか?について話を進めます。

プラス面1:耐久力の向上

 

The Effects of Preexercise Caffeinated Coffee Ingestion on Endurance Performance: An Evidence-Based Review.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26568580

 

ジョージア州立大学のヒギンズ氏らが発表した上の論文は、カフェインと長距離ランナーやサイクリストなどの耐久系アスリートのパフォーマンスとの関係について、既存の研究を分析したエビデンス・ベース・レビューと呼ばれる種類のものです。

それによりますと、9つの研究のうち6つで、運動の45分以上前にカフェインを摂取した場合、以下の通りの効果が認められました。

  • 体力の限界に到るまでの時間:平均して4%の向上
  • タイムトライアルのパフォーマンス:平均して1%の向上

論文著者は結論として体重1キロあたり3~8.1mgの範囲(*)でカフェインを摂取すると耐久力を向上させる効果があるとしています。

(*)筆者注:コーヒーカップ一杯に含まれるカフェイン量は大体100mg程度です。間をとって体重1キロあたり5mgを摂取するとして、体重60キロの筆者だと300mg。大体の目安ではコーヒーカップ3杯程度になります。

 

プラス面2:筋持久力パフォーマンスの向上

 

The Effects of Acute Caffeine Supplementation on Performance in Trained CrossFit Athletes.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31027203

 

カンザス州立大学のこの研究ではカフェインと筋持久力パフォーマンスとの関係について以下のような実験を行っています。対象になったのはクロスフィットを数年以上の経験がある20代から30代前半までの男性アスリートたちです。

研究では被験者を体重1キロあたり5mgのコーヒーを摂取するケースとコーヒーに見せかけた飲料を摂取するケース(プラセボ)に分け、クロスフィットの代表的なワークアウトである“Cindy”を1週間の間隔をおいて2回実施しました。

“Cindy”は20分間以内に懸垂5回+腕立て伏せ10回+自重スクワット15回を1セットとしてトータルの反復回数を測るものです。

結果として、コーヒーを摂取したケースの反復回数(461.4 ± 103)はプラセボのそれ( 425.0 ± 93.5)を大きく上回りました。論文著者はカフェイン摂取が筋持久力パフォーマンスを向上させる効果があると結論に述べ、将来の課題として、他のワークアウトや女性アスリートについての研究もされるべきだとしています。

他にも、ジョージア州立大学のウォーレン氏らが既存の多数の研究をまとめたメタ解析という手段による以下の論文がカフェインが持つ筋持久力を向上させる効果について後押ししています。

 

Effect of caffeine ingestion on muscular strength and endurance: a meta-analysis.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20019636

 

注意点

 

カフェイン摂取がアスリートの耐久力や筋持久力を向上させる効果があることは証明されているようですが、以前から言われてきたように、注意すべき点もいくつかあります。

その1つが、カフェインのもつ利尿作用です。コーヒーを飲むとトイレが近くなる、さらにはレース中に脱水症状を引き起こす恐れがある、そのような懸念から、特にレース前にはコーヒーを控えるようにアドバイスする指導者は少なくありません。

もう1つ、カフェインの覚醒作用によって睡眠が妨げられることも挙げられます。一般的には、カフェインの作用は6~8時間ぐらい続くとされているので、就寝時刻から逆算して、それ以降はコーヒーを飲まないように勧められます。もっとも、カフェインの睡眠への影響には個人差が大きく、人によっては就寝直前にコーヒーを飲んでも問題なく眠れる場合もあります。

 

まとめ

 

カフェインの好影響(耐久力と筋持久力の向上)も悪影響(利尿作用と睡眠の妨げ)もその現れる大きさには個人差があります。カフェインを摂取する量やタイミングによっても、結果は大きく変わります。上の研究で使われた量(体重1キロあたり5mg)を目安にして、自分にとっての適量とタイミングを探ってみるとよいでしょう。

 

 

[筆者プロフィール]

角谷剛(かくたに・ごう)

コメント一覧

全1件のコメント

  1. 2019年10月17日 09:51

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