膝から下をぴっちりと覆う靴下、コンプレッション・ソックスを身につけたランナーの姿を多く見かけるようになりました。

ふくらはぎを圧迫(compresss)することで、筋肉のブレが軽減される。すると着地の際に生じる衝撃が和らぎ、結果として筋肉疲労を減らす効果がる。また付近の血管を圧縮することで血流が促進されるので、疲労物質の除去が進み、疲労回復能力が高まる。そのように言われています。

簡単にまとめますと、コンプレッション・ソックスを着用することの主な効果は以下の2つでしょう。

1.ブレを減らす → 筋肉痛を軽減する

2.血流を促進する → 疲労回復を速める

 

他にも、皮膚を外傷から守る、日焼け止めになる、防寒になる、格好いいなどの理由でコンプレッション・ソックスを着用する人もいるでしょうが、それらは圧迫機能とは関係ありませんので、ここでは触れないことにします。

ランナーに限らず、テニスやバスケットボールら様々なプロスポーツの選手が腕や脚を覆ったシャツやタイツを着用しているのを観たことがある人は多いと思います。それだけ広くプロに用いられているのだから、コンプレッション機能を持つウェアには確かな効果があるはずだと思われるのですが、本当にそうだろうかと疑問を持つ人もまた多いようで、学術サイトを検索すると、コンプレッション機能の効果について研究した論文はかなりの数になることがわかります。その中から、特にコンプレッション・ソックスと現実のランナーとの関連について研究した論文を紹介します。

研究1.ウルトラマラソン・ランナー

 

Investigation of the Impact of Below-Knee Compression Garments on Markers of Exercise-Induced Muscle Damage and Performance in Endurance Runners: A Prospective Randomized Controlled Trial.

Grethe Geldenhuys, A et al 2019

https://doi.org/10.1177/1941738119837644

 

ある56km のウルトラマラソンを実際に走ったランナーを、コンプレッション・ソックスを着用したグループ(男性14人、女性6人)と着用しなかったグループ(男性15人、女性6人)に分け、筋肉へのダメージとパフォーマンスとの関係について調べました。すると両グループの間に明確な違いは確認されませんでした。

 

論文著者の結論は、コンプレッション・ソックスを筋肉へのダメージを減らす、あるいはランニング・パフォーマンスを高める目的で着用することを勧める根拠はない、としています。要するに着ても着なくても一緒だよ、ってことですね。

 

研究2.市民ランナー(トレッドミル10㎞の実験)

 

Effects of Exercise Compression Stockings on Anterior Muscle Compartment Pressure and Oxygenation During Running: A Randomized Crossover Trial Conducted in Healthy Recreational Runners.

Rennerfelt, K et al 2019

https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-019-01103-y

 

20人の健康な市民ランナーに、コンプレッション・ソックスを着用する場合と着用しない場合の2回、同じペースで10㎞の距離をトレッドミルで走ってもらいました。2回のランの間には4~21日間の間隔がとられ、どちらを先にするかはランダムで決定されました。

ランの前後及び最中、ランナーたちは筋肉内圧(IMP)および筋肉酸素化をモニターされ、さらにラン前後に血液サンプルも採られて、ミオグロビンおよびクレアチンキナーゼ濃度の解析に用いられました。

その結果、コンプレッション・ソックスを着用した場合、筋肉内圧(IMP)は増え、筋肉酸素化は低くなりました。また血中ミオグロビン濃度が高くなりました。

ただし、コンプレッション・ソックスを着用しても、筋肉へのダメージは軽減されず、また血液循環への効果は認められないとしています。

この論文の結論からは、結局、コンプレッション・ソックスに効果はあるの?ないの?という疑問には歯切れの悪い回答しか得られないのですが、どうやら、体内に変化は生じる、だがその変化にはランニング・パフォーマンスに与える大きな影響はない、ということになりそうです。

研究3.フルマラソン・ランナー

 

The Influence of Compression Socks During a Marathon on Exercise-Associated Muscle Damage.

Zaleski, A et al 2018

https://journals.humankinetics.com/view/journals/jsr/aop/article-10.1123-jsr.2018-0060.xml

 

2013年のハートフォード・マラソンを走るランナーから、コンプレッション・ソックスを着用した10人と着用しなかった10人をランダムに選び、血液サンプルをレース24時間前、ゴール直後、そして24時間後の3回に渡って採集し、クレアチンキナーゼ濃度を比較解析しました。

その結果として、両グループの間にはクレアチンキナーゼ濃度の変化に大きな違いはありませんでした。

論文著者は結論として、コンプレッション・ソックスを着用しても、レース中及び24時間後の筋肉へのダメージを軽減する効果はない、としています。

まとめ

コンプレッション・ソックスとランニングをキーワードで探すと、上のように「効果はない」、「あまり意味はない」とする学術論文が次々に出てきます。

もちろん、効果はあるとする論文も多くありますし、市民ランナーからプロのアスリートまで、多くの人が愛用していることは前述した通りです。

それに、コンプレッション・ソックスがランナーに悪影響を及ぼすとする論文は見当たりませんでした。特に可もなく不可もない、ということでしたら、後は個人の好みになるのではないでしょうか。人によっては、お守りのような精神的効果があるのかもしれません。

 

[筆者プロフィール]

角谷剛(かくたに・ごう)

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