マラソンなどのレースやあるいは練習などで長時間の運動をした後には、失われた水分を速やかに補給し、さらに炭水化物とタンパク質を摂取することはとても大切です。枯渇したグリコーゲンを再合成し、ダメージを負った筋繊維を回復させなければ、次のレースや練習に充分なコンディションで臨めないからです。

特に運動直後の30分以内に食事をしろと指導されたことがあるアスリートは多いのではないでしょうか。この30分間は回復のために最も重要な時間帯だとされていて、運動のエネルギーとなる筋肉中のグリコーゲンを再合成するためには、運動後にいち早く炭水化物を取り込むべきとする説をよく目にします。

ところが、それは口で言うほど簡単なことではありません。言うまでもありませんが、マラソンなどの長いレースを走った直後には、筋肉だけではなく内臓もまた疲れ切っているからです。ゴールした直後は、胃がムカムカして、とても食事なんてできないよ、という状態を経験したことがあるランナーは多いでしょう。消化能力も普段より落ちているだろうし、そのような状態で食べても、ちゃんと栄養素は身につくのかと疑問に感じる人も少なくありません。それでもアスリートは無理をしても運動直後に食事をするべきなのでしょうか?

少し古い時代のものですが、下の論文はその疑問に一つの回答を与えてくれます。

 

Muscle glycogen storage following prolonged exercise: effect of timing of ingestion of high glycemic index food.

Parkin, JA et al 1997

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9044226

 

研究方法:6人のトレーニングを積んだサイクリストに2時間のサイクリング(VO2Maxの70%)の後でさらに30秒間の全速力インターバルを4回繰り返す激しいワークアウトを行ってもらい、その後の24時間以内に5回の炭水化物を多く含む食事を摂取してもらいました。ただし、2回の実験で、食事を摂取するタイミングを以下のように変えています。

実験1: 運動終了直後に初めての食事。その後2時間ごとに食事 (0, 2, 4)。

実験2: 運動終了時から2時間後に初めての食事。その後2時間おきに食事 (2,4,6)。

 

そして全員から食前と食後に血液サンプルを採集して、グルコースとインシュリンの解析を行いました。

 

結果:2回の実験を比較すると、運動終了から8時間後と24時間後のグリコーゲン再合成に違いはありませんでした。

論文著者らの結論は、次のレースまたは練習までに24時間以上あるアスリートは急いで食事をする必要はない、ということです。急いで食べても、後でゆっくり食べても、一日経った後の回復度には違いはないからです。どうやら、マラソンでゴールした直後に無理をして食べる必要はないということですね。

 

それでは、1日に何回もレースがある場合、あるいは翌日にまたレースがある場合はどうするか? フルマラソンを1日に2回走る人はめったにいないでしょうが、○○日連続ウルトラマラソン・レースとか地獄の強化合宿とかで、次の運動まで24時間以上の回復時間を持てない場合は考えられます。その場合はやはり運動後になるべく早く食べないといけないようです。逆に言えば、毎日連続して練習するなら、食欲が減退するほどの運動量は回復が追い付かなくなる可能性があると言えるかもしれません。

 

角谷剛(かくたに・ごう)

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全1件のコメント

  1. 2019年9月12日 10:56

    […] 前回の記事で運動直後の栄養補給(特に炭水化物)は24時間後の回復状態にさほどの影響を及ぼさないと結論づけた論文を紹介しました。今回は一見するとそれと相反するような、だけ […]

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