前回の記事で運動直後の栄養補給(特に炭水化物)は24時間後の回復状態にさほどの影響を及ぼさないと結論づけた論文を紹介しました。今回は一見するとそれと相反するような、だけどじっくり読むとそうでもない、という別の論文を紹介します。

最初にこの研究の結論を述べますと、以下になります。

フルマラソンを走っている最中、及びゴールした直後に炭水化物とタンパク質を含んだ補給を行うと、炭水化物のみの補給を行った場合に比べて、24時間後の回復には大差はないが、72時間後には筋肉痛の軽減と疲労からの回復に大きな効果が認められる

つまり、タンパク質を摂っても摂らなくても、レース翌日までは回復に大して変わりはないけど、3日後にはかなり違ってくる、長い目で見るとやっぱりタンパク質は摂った方がよいということです。前回の記事で紹介した論文では運動終了後の8時間後と24時間後のデータを対象にしていました。この研究も24時間後までをデータ解析対象にしていたら似たような結論になってしまっていたところを、それに72時間後を加えたことで別の結論を導くことに成功しています。

Protein Supplementation During or Following a Marathon Run Influences Post-Exercise Recovery.

Saunders, MJ et al 2018

https://www.mdpi.com/2072-6643/10/3/333/htm

研究を行った米国バージニア州のジェームズ・マディソン大学の運動生理学部では、かなりユニークな調査方法を取りました。同大学キャンパス内でジョギングをしている学生たちに声をかけ、15週間に渡って指定されたトレーニングを受けたのちに、実際にフルマラソンを走ってもらい、彼らのデータを採集したのです。この呼びかけに応え、ボランティアで研究に協力した学生たちは全員が初心者ランナーで、誰にもフルマラソンを走った経験がありませんでした。平均年齢が20~22歳の若い男女です。

彼らはレースまでの15週間の間、週4回の合同トレーニングに参加し、短い日で5キロ、最も長い日は30キロを走りました。15週間の合計走行距離は568.5キロです。

データ採集は2回に渡って、実際のフルマラソン・レースを利用して行われました。1回目の主題はレース最中の栄養補給、2回目の主題はゴール直後の栄養補給です。どちらもランナーを2つのグループに分け、1グループは炭水化物のみの補給、別グループは炭水化物とタンパク質を含んだ補給を行いました。ランナーたちは自分がどちらのグループに属しているかは知らされていませんでした。

客観的な医学データとしては血中のクレアチンキナーゼ濃度が採集され、それに加えてランナー自身の主観的な疲労回復度と筋肉痛の度合いのアンケート調査が行われました。それもゴール直後、24時間後、さらに72時間後に分けて、それぞれの時点でのデータ採集を行ったことで、冒頭に述べました結論が導かれたというわけです。

尚、研究1(レース最中の栄養補給)ではノースカロライナ州で行われたサンダー・ロード・マラソンに16人のランナーが参加し、研究2(ゴール直後の栄養補給)ではアラバマ州で行われたロケットシティー・マラソンに8人のランナーが参加しました。研究1と2の間には1年間の間隔がありましたが、彼らは全く同じ内容のトレーニングを積み、1人を除いて全員が42.195キロを完走しています。平均ゴールタイムは約4時間でした。15週間、週4回のトレーニングで初心者がフルマラソンを完走できるということで、これだけでも興味深い研究だと言えそうです。

 

角谷剛(かくたに・ごう)

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