糖質制限、低炭水化物、アトキン、ケト、などなど呼び名は様々ですが、これらの後ろに「ダイエット」をつけた食事方法が流行っています。それらには微妙な違いはあるのでしょうが、大雑把にくくってしまうと、糖質を多く含む食品(お米、パン、麺類、甘いモノ)の摂取量を減らすことだと理解してよいかと思います。以後、本文では糖質制限食と用語を統一します。

糖質制限食は体重を減らすダイエット効果がまず語られ、また糖尿病に代表される生活習慣病のリスクを減らすとも言われています。こうした糖質制限食の健康面への影響についてはメリット・デメリット双方で多くの説がありますが、ここではあえてそのことには触れません。

長距離耐久系スポーツの世界でも糖質制限食を取り入れるアスリートが増えてきました。プロトレイルランナーの鏑木毅選手が有名な例です。

カーボ・ローディングから糖質制限食へ

以前はマラソンなどの長距離レースを走る前はカーボ・ローディングと称して、普段より多くの炭水化物を摂って、筋肉中のグリコーゲンを増加させる方法が一般的でした。糖質制限食はその真逆にあります。

いくら貯めこんでおいたところで体内のグリコーゲンの量には限度があり、それでは長距離走レースには足りない。だが1g当たり9カロリーのエネルギーを持つといわれる脂肪をエネルギーとして使えるようになれば、理論上はほぼ無制限に走り続けることができる。体内の糖質が少ないと、体は脂肪をエネルギーに活用するようになる。糖質制限食が長距離耐久系スポーツに向いているとするのはこの理屈です。

 

論文紹介:糖質制限食は脂肪活用能力を高める。

しかし、糖質を減らして、しかも理屈通りに脂肪を活用できなければ、エネルギーはますます枯渇してしまいます。糖質制限食は本当に脂肪活用能力を高めることが出来るのか、この疑問に着目したのが以下の論文です。

 

Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners

Volec J. et al 2016

https://www.metabolismjournal.com/article/S0026-0495(15)00334-0/fulltext

 

研究方法

20人のウルトラマラソン・ランナーとアイアンマン距離のトライアスリートを高炭水化物ダイエットを実行しているグループ(HC)と糖質制限食グループ(LC)に分け、強度の高いエクササイズ(VO2Max の70%以上)と180分のトレッドミル走(VO2Max の64%)を行ってもらい、体内エネルギーの解析を行った。両グループの摂取栄養素の比率は以下の通り。

  • 高炭水化物(HC):炭水化物59%、タンパク質14%、脂肪25%
  • 糖質制限食(LC):炭水化物10%、タンパク質19%、脂肪70%

 

尚、上の食事方法を採用している期間の平均は20か月(9か月から36か月まで)。

 

結果

強度の高いエクササイズでは糖質制限食(LC)の脂肪活用率(peak fat oxidation)は高炭水化物(HC)の2,3倍になり、180分のトレッドミル走(VO2Max の64%)においても脂肪活用率(mean fat oxidation)は59%高かった。一方で、筋肉中のグリコーゲンの量には両グループ間に大きな違いはなかった。

 

結論

糖質制限食は耐久系アスリートの脂肪活用能力を高める。

筆者の考察

目的がダイエットであれ、スポーツ・パフォーマンスであれ、人が食事方法を変える時、すぐに結果が出るものと、長い期間が必要になるものがあります。糖質制限食はどうやら後者のようです。

流行りだからという理由で糖質制限食を試してはみたけど、望ましい結果がすぐに出ないと元の食事に戻してしまった人は多いのではないでしょうか。ダイエットであれば体重計の数字で結果が一目瞭然なのですが、脂肪をエネルギーに活用できているかどうかはランナー自身の主観に頼らざるを得ないので無理もない面もあります。

上の論文では対象になったアスリートたちは最低でも9か月、最長では36か月にも渡って、それぞれの食事方法を続けていることに注目して頂きたいと思います。糖質制限食を取り入れる場合は、結果が出るまでに長い期間がかかるかもしれないことは知っておくべきかと思います。

角谷剛(かくたに・ごう)

コメント一覧

コメントはありません

コメントする

コメントを投稿するにはアカウントを作成し、ログインしている必要があります。