マラソンなどの長距離レースやあるいは練習などで長時間の運動をした後には、体内からは大量の水分が失われています。余程念入りにレース中の水分補給をしない限り、ゴール直後のランナーは多かれ少なかれ一種の脱水状態にあると言ってよいでしょう。

 

そのようなときには早急に水分を補給する必要がありますし、そうでなくても喉が渇いていますので、ゴール直後に水のボトルを何本もがぶ飲みするランナーをよく見かけます。残念ながら、そのように短時間で急激に摂取した大量の水分の殆どは体内に留まらず、すぐに尿として排出されてしまいます。せっかく飲んだ水分が無駄になるだけならまだしも、尿から水分と同時に大量のナトリウムも排出されると低ナトリウム血症の危険性までもが高くなってしまいます。低ナトリウム血症とは体内の水量が過剰になることで血中のナトリウムの濃度が低下してしまうことにより、頭痛や痙攣などの症状が現れることを指します。

 

一度に大量の水を飲んでも無駄になる理由

「タイム」誌での記事中で、ノース・カロライナ州立大学のデビット・ニーマン教授は下のように警告しています。

 “もし水を飲んだ2時間以内に大量で透明の尿が出てくるなら、それは水分が体内にきちんと留まっていない証拠です。水分を食べ物や栄養素と同時に摂らないと、多くの場合において水分は体内の消化システムをただ通過してしまいます。特に空腹の状態で大量の水を飲むとその傾向は強くなります”

 

とは言っても、ゴール直後にゆっくり食事をしながら水を飲むことは実際には困難ですので、水分と同時に栄養素も補給するためにスポーツドリンク、牛乳、ジュースなどを摂ると、水だけを飲むよりは体内の水分を適正レベルに戻すことができます。

 

論文紹介:激しい運動直後にバナナがもたらす代謝回復効果。

さらにニーマン教授は激しい運動の直後に水だけを飲む場合、スポーツドリンクを飲む場合、水と一緒にバナナを食べる場合に分けて、アスリートの回復効果にどのような違いが生じるかを調べました。

 

 

Metabolic recovery from heavy exertion following banana compared to sugar beverage or water only ingestion: A randomized, crossover trial

Nieman D. et al 2018

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0194843

 

研究方法

20人のサイクリストに75キロのタイムトライアルを行ってもらい、ゴール直後に水だけを飲むグループ、スポーツドリンク(糖分6%)を飲むグループ、水と一緒にバナナを食べるグループに分けて、運動前と運動直後、さらに45時間後までの6回に渡って血液サンプルを摂取。

 

結果

バナナを食べたグループの代謝回復は水だけあるいはスポーツドリンクを飲んだグループに比べて、良好な数値を示した。

 

筆者の考察

上の研究結果をアスリートは水分の摂取量を減らすべきだとか、水以外の飲み物に変えるべきだと単純に結論づけるべきではないでしょう。しかしながら、ゆっくり水を飲んで、出来れば食べ物を一緒に摂ることが、少なくとも一度に大量の水をがぶ飲みするよりは体内の水分量を適正に保つうえで有効な方法であるとは言えるようです。

個人的にはバナナは大好物なので上の研究結果は嬉しい知らせです。このように言われなくても、ゴールの後に何本もバナナを食べることはよくあります。もっとも私とは異なり、長時間の運動をした後では胃がとても食べ物を受け付けないという人もいるかもしれません。レース直後は誰でも空腹ですので、何かしら栄養を補給する方法を考える必要があります。何もバナナに限らず、どのような果物でも水と一緒に食べると水分補給の効果は上がるとニーマン教授は述べています。

 

ライター

角谷剛(かくたに・ごう)

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