ヨガとは言わずと知れた古代インド発祥の身体的、精神的、そして宗教的な修行法の総称です。本来はバラモン教、ヒンズー教、仏教、などの宗教実践者が解脱に到達するために行ったものですので、非常に厳しくつらい苦行であったと想像されるのですが、今日私たちが見聞きするヨガには、おしゃれとか癒しといったイメージがつきまといます。ファッショナブルでもあり、フィットネスでもあり、あるいはリラクゼーションとして、特に女性に人気があります。

 

話がいきなり飛んで申し訳ありませんが、私には米国で空手を指導していた時期があります。”KARATE”は既に立派な英語の単語になっているほどに、当地ではありとあらゆる空手の流派や道場が広がっていますが、その中には目を疑うようなものも混じっています。おもちゃのヌンチャクを振り回す子供、“創作”形の競技でにっこり笑ってウインクをする女性、黒い空手着の袖を切って筋肉を見せびらかすマッチョ男性、みんな自分たちは空手をやっていると主張します。もちろん、きちんとした空手の道場もけっして少なくはありません。まさに玉石混交と呼んでいい状態で、空手や武道というものに全く事前知識がない人は、最初に見たものを空手だと思ってしまうのだろうなあと頭を抱えることがよくありました。ヨガの世界も多分それと似たり寄ったりなのではないだろうかと想像します。

 

たとえ本来のものとは大きく異なっているのだとしても、現在流行している身体的エクササイズとしてのヨガを取り入れるアスリートが増えてきました。その目的は柔軟性の向上であったり、疲労からの回復であったりと様々ですが、新たなトレーニングや調整方法として注目を浴びています。メジャーリーグの春季キャンプでヨガのインストラクターが選手たちを集めて指導を行うことなども珍しくありません。

 

私自身も以前かなり真剣に足繁くヨガ・スタジオに通いました。現在は指導している高校の陸上部で練習の最後に「クールダウン・ストレッチ」と称して、ヨガらしきものを生徒たちにやらせています。

 

今回はアスリートのためのヨガ、そのテーマについて書かれた書籍を紹介します。

 

アスリートヨガ

原題:Yoga For Athletes

ライアン・カニングハム (著), 東出 顕子 (翻訳)

 

内容紹介

 

Part 1アスリートにとってのヨガの効用

アスリートがヨガをすることには以下のメリットがあると述べて、それぞれに説明があります。

  • 筋肉の回復を助ける
  • ケガを予防する
  • ストレスを軽減し、集中力を高め、緊張を和らげる
  • (専門スポーツで)あまり使われない筋肉を鍛える
  • 体幹を鍛える
  • 睡眠の質を高める

 

そしてこれらのメリットはあらゆるスポーツのあらゆるレベルのアスリートに共通してもたらされるとしています。

 

Part 2種目別パフォーマンス向上のためのポーズ

以下のスポーツ種目ごとに1章が割かれ、それぞれで酷使する筋肉群、そして使用しないためにアンバランスになってしまう筋肉群に着目し、いくつかの推奨されるポーズが解説されています。

 

  • アメリカン・フットボール
  • ランニング
  • サッカー
  • サイクリング
  • 野球とソフトボール
  • 水泳
  • テニス
  • バスケットボール
  • ゴルフ
  • 高強度トレーニング

 

ランニングの章には「脚だけでは走れない」というサブタイトルがつけられていて、下半身だけではなく、体幹と肩回りの筋肉群を伸ばし、またバランスを取ることの重要性が説かれています。

 

ポーズ索引

本書に出てくる全ポーズがあいうえお順の索引になっています。

 

筆者の感想

本書の著者ライアン・カニングハムさんはアメリカン・フットボールのプロ選手を始めとして、様々なジャンルのスポーツ選手にヨガを指導したと紹介されています。ちなみにライアンの綴りはRyan ではなく、Ryanneという女性の方です。

ところで本書の原題は”Yoga For Athletes”で、直訳すると「アスリートたちのためのヨガ」になります。私自身も翻訳をやりますので、あまり他人の訳をあげつらいたくはないのですが、邦題の「アスリートヨガ」は誤訳とは言えないまでも、誤解を招きやすい表現だと思います。

アスリート「が」やるヨガとなってしまうと、なにか競技か訓練に近い別種類のヨガがあるように聞こえてしまう気がするからです。そうではなくて、ヨガという大きな括りの中から、アスリートのために役に立つものを選んで紹介したのが本書の内容です。

本のカバーに「パフォーマンスを向上させる」、「怪我を減らす」、「トレーニング効果を最大化する」とあるように、あくまでもアスリートのためのヨガという実践的なテーマに焦点を絞っているところに本書の価値があると思います。個々のポーズの解説には写真が多く使われていて、視覚的にも理解しやすくなっています。

冒頭に述べましたように、ここに書かれているものはホンモノとは似ても似つかない「なんちゃってヨガ」なのかもしれません。しかしながら私自身はその恩恵を日々感じていますし、これからも続けていこうと思っています。

 

 

角谷剛(かくたに・ごう)

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