ダイエットや健康法に関する情報に敏感な人は断続的断食(Intermittent Fasting)という単語を最近よく見聞きするのではないでしょうか。日本ではプチ断食と呼ばれることも多いですが、米国ではこの数年間で最も注目を浴びているダイエット方法と言えるでしょう。有名な芸能人から医療関係者まで、様々な人がこの断続的断食がダイエットに良いだけではなく、長期的な健康効果があると主張しています。

断続的断食の代表的なパターン例

断続的断食とはつまり、食べ物を全く摂取しない時間帯を定期的に且つ連続して設けることです。様々なパターンがありますが、代表的なものは以下の通りです。

 

  • 16:8ダイエット: 1日のうち、食べ物を摂取しない時間を16時間、摂取する時間を8時間に分ける。
  • 5:2ダイエット:1日の総カロリー摂取量を女性は500カロリー以下、男性は600カロリー以下にする日を週2日(連続してはいけない)設ける。
  • 24時間断食:24時間食べ物を摂取しない日を週に1回ないし2回設ける。

 

最も取り組みやすいのは16:8ダイエットでしょう。元々朝食を食べない人は多いですが(そしてそれは健康に良くないとされてきましたが)、お昼まで何も食べない人は前日の夜8時までに食事を済ませておけば、それだけで16:8ダイエットのパターンに当てはまります。

アスリートへの効果を測りにくい理由

断続的断食の歴史は浅く、現在のところはまだ「流行りもの」の域にあると言ってよいでしょう。効果や安全性についての学術的調査も充分であるとは言えませんし、その数少ない研究対象はダイエットや健康効果についてなされたものが殆どです。

断続的断食はアスリートのパフォーマンスにどのような影響があるか? という筆者の疑問に答えてくれる文献を見つけることは出来ていません。容易に想像がつくでしょうが、アスリートのレベルが上がるほど、新しい食事方法を気軽に試すことは出来なくなりますし、調査に協力を依頼することも困難になるからです。つまり、信頼に足るほどのサンプル数が絶対的に不足しているのです。

ラマダンが提供する大規模サンプル

幸いと言えば語弊があるかもしれませんが、断続的断食とスポーツ・パフォーマンスの関連について有用な情報を提供してくれる集団があります。イスラム系の人々は毎年ラマダンと呼ばれる約1か月の期間中、日の出から日没にかけて一切の飲食を断ちます。

もちろん、ラマダンは断続的断食とまったく同じなわけではありません。ラマダンでは飲み物も摂りませんし、また夜中にかけてかえって普段より多くの食べ物を食べることもしばしばだからです。それでも、ラマダン期間中のアスリート群を対象にいくつかの研究がなされています。

 

Impact of Ramadan on physical performance in professional soccer players.

Zerguini Y. et al., 2007

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2465333/

 

アルジェリアのプロサッカーチームに所属する55人の選手を対象にしたこの調査では、ラマダンが終了した直後のスピード、アジリティ、ドリブルのスピード、持久力など多くの運動能力が低下していたことが分かりました。

 

Three-days of Islamic intermittent fasting negatively impact repeated-sprints performance of active young healthy adults.

Chamari K. et al., 2007

https://www.researchgate.net/publication/313866426_Three-days_of_Islamic_intermittent_fasting_negatively_impact_repeated-sprints_performance_of_active_young_healthy_adults

 

21人の健康な男性を対象にしたこの調査では、ラマダン期間中に3日間の断食をした後でスプリント能力が大幅に減っていたことが報告されています。

 

Effects of Ramadan Intermittent Fasting on Sports Performance and Training: A Review.

Chaouachi A et al., 2009

https://www.researchgate.net/publication/40759596_Effects_of_Ramadan_Intermittent_Fasting_on_Sports_Performance_and_Training_A_Review

 

既存の様々な研究を解析したこの論文でもラマダン期間中は広範囲でアスリートのパフォーマンスが低下すると結論づけています。

 

筆者の考察

ラマダンの例をもって、断続的断食はアスリートに悪影響があるとは決めつけられないと思います。前述したように、ラマダンでは飲み物も制限されますし、夜中に食べることによって睡眠の質も低下していると思われるからです。これらはダイエットや健康のために流布している断続的断食の方法論には見られないことで、ラマダンにはパフォーマンスを低下させる要因が断食以外にもあると言えるでしょう。

激しい運動を行うアスリートは一般の人よりも多くの栄養を必要とします。特に1日に数回以上の運動をするアスリートは栄養摂取もそれに合わせる必要があります。その点を考慮すると、栄養補給のタイミングを制限することになる断続的断食は高いレベルのアスリートには(特に競技シーズン期間中は)向いていないと思えます。趣味や楽しむことが目的でスポーツを行う人にとっては、特に体重をコントロールする方法としては検討の余地があるかもしれません。

 

角谷剛(かくたに・ごう)

コメント一覧

コメントはありません

コメントする

コメントを投稿するにはアカウントを作成し、ログインしている必要があります。