極めて当たり前のことで、あらためてこんなことを書くのは恥ずかしいぐらいですが、ランニングのパフォーマンスを向上させるためには、練習量を増やすことが必須です。問題なのは、長距離ランナーが急激に走行距離を増やすと、怪我のリスクもほぼ比例して大きくなることです。様々な調査によると、70%とか80%ぐらいの割合でランナーは何かしらの故障を経験しているそうです。

 

そうしたわけで、走行距離を抑えながらもトレーニングの負荷を増やしていく方法が望まれるわけですが、最近注目されているのが、高負荷のインターバル・トレーニング、high-intensity interval training (HIIT)です。

 

ランナーにとっては400メートルトラックを使ったインターバル走(例:800m全力+ 200mジョグの繰り返し、など)は以前からお馴染みの練習方法ですが、HIITのプロトコルは通常もっと短い時間と間隔で行います。

 

代表的なHIITトレーニング:タバタ

 

HIITで最も有名なプロトコルと言えば、立命館大学の田畑泉教授の名前を冠した「タバタ」でしょう。タバタは非常にシンプルなプロトコルです。20秒間の“強度の高い運動”と、10秒間の“休息”あるいは“負荷の軽い運動”を1ラウンドとして、それを8ラウンド繰り返すというもの。要するに、運動と休息の割合は2:1。合計所要時間がたった3分50秒のインターバル・トレーニングです。

 

田畑教授による研究の結果、このプロトコルで心肺能力が飛躍的に向上することが証明されました。しかも、有酸素運動エネルギー(長距離走など)と無酸素運動エネルギー(短・中距離走など)の両方に効果があることもわかっています。

 

タバタでは運動の種類は特に指定されませんが、よく使われるのは固定自転車です。着地衝撃がなく、また下半身を鍛える効果もありますので、ランナーにとっても最適の方法だと言えるでしょう。

研究事例:タバタよりさらに短時間のインターバル

 

その固定自転車を使い、このタバタよりさらに短い運動時間、そして長い休息のHIITを行って、長距離ランナーへの効果を研究した論文がありますので紹介します。

 

High-Intensity Cycling Training

The Effect of Work-to-Rest Intervals on Running Performance Measures.

Kavaliauskas, M. et al., 2015

https://journals.lww.com/nsca-jscr/Fulltext/2015/08000/High_Intensity_Cycling_Training__The_Effect_of.19.aspx

 

研究方法:

32人の長距離ランナー(男性14人、女性18人、平均年齢39歳、平均月間走行距離160キロ)を対象に、2週間に渡って以下のトレーニングを行ってもらいました。トレーニング期間の開始前と終了後に3キロ走のタイムトライアルを実施し、加えてVO2max, 疲労困憊になるまでの時間、そしてWingate Testと呼ばれる無酸素運動能力を測定するテスト値の比較を行いました。

トレーニング内容:

固定自転車で10秒間の全速力スプリントを6セット。これを2週間内で6回行う。

インターバル間隔を3つのグループに分ける。

  1. 各ラウンドの休息時間=30秒間、運動と休息の割合=1:3
  2. 各ラウンドの休息時間=80秒間、運動と休息の割合=1:8
  3. 各ラウンドの休息時間=120秒間、運動と休息の割合=1:12

 

結果:

  • 3キロ走のタイムトライアルはa) グループのみに有意な向上があった。
  • 疲労困憊になるまでの時間はa), b) グループに有意な向上があった。
  • VO2max値はすべてのグループに向上が見られ、グループ間に有意な差はなかった。
  • 無酸素運動能力はグループc)のみに有意な向上があった。

まとめ

固定自転車を使ったHIITにはランニングパフォーマンスを向上させる効果があるようです。論文著者らは有酸素運動エネルギー(長距離走など)を重視するなら休息の時間を短くし、無酸素運動エネルギー(短・中距離走など)を重視するなら休息の時間を長くすることを勧めています。

どちらにしても、わずか10秒の運動を6セット。それを2週間で6回行うだけで確かな効果があるというのは耳寄りな情報ではないでしょうか。もっとも、この研究の対象になったのは平均して月に160キロ走っているランナーたちです。それだけの練習をこなしながら、さらにHIITを加えると効果があるということで、ただHIITだけをやればよいといった虫の良い話ではないようです。

 

角谷剛(かくたに・ごう)

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