テンポ・ランと言う言葉には様々な定義がありますが、ここでは目標とするレースタイムよりやや速いペースで走る練習のこととします。仮にフルマラソンを3時間ジャストで走る目標を立てたとします。42.195キロをその時間でゴールするには、計算上の1キロ平均ペースは約4分15秒になります。それよりやや速いスピード、例えば1キロ4分00秒のペースである程度の距離を走り続けるという練習をテンポ・ランと呼びます。他にペース走、あるいは難しい言葉で乳酸性作業閾値(Threshold)ランと表現する人もいますが、ここではテンポ・ランで用語を統一します。

 

タイムにあまりこだわらず、ただレースを完走したいという人には不要ですが、次のレースで自己ベストタイムを更新したいと思う人にとっては、このテンポ・ランはスピードとスタミナを向上させるうえで欠かせない練習の1つになります。

 

米国のスポーツ学術サイト『Journal of Strength and Conditioning』上で最近発表された論文では、テンポ・ランを練習に取り入れた長距離ランナーはそれを行わなかったランナーに比べて、平均して18%タイムが速くなったという統計結果がありました。

 

World-Class Long-Distance Running Performances Are Best Predicted by Volume of Easy Runs and Deliberate Practice of Short-Interval and Tempo Runs.

Alda, AC. Et. al., 2019

https://www.researchgate.net/publication/332769237_World-Class_Long-Distance_Running_Performances_Are_Best_Predicted_by_Volume_of_Easy_Runs_and_Deliberate_Practice_of_Short-Interval_and_Tempo_Runs

 

ただし、ここで注意しなくてはいけないのは、テンポ・ランは体にかなりの負荷がかかり、トレーニング効果が大きいと同時に、怪我のリスクも他のトレーニング方法に比べて高くなってしまうことです。言わば、諸刃の剣です。

 

ランニングのトレーニング理論に関していくつもの著作があるPete Magill氏が新書『Fast 5K』の中でテンポ・ランの取り組み方について論じています。Magill氏によると、テンポ・ランを取り入れるランナーがよく冒してしまう間違いは、テンポ・ランを頻繁に行い過ぎること、そして設定をハードにし過ぎることだそうです。結果として、オーバーワークに陥り、怪我を誘発するか、燃え尽き症候群になってしまうことが多いと警鐘を発しています。

距離ではなく時間で区切ったプログラミング

それではテンポ・ランを練習に取り入れるにはどのようなプログラミングを考えたらよいのでしょうか。Magill氏が提唱するのは、テンポ・ランの指標を走行距離におくのではなく、時間で区切る段階的なアプローチです。ランナーのレベルに応じて、テンポ・ランのペースで10分間か5分間走り、2~3分のゆっくりしたジョグを挟んで、何回か繰り返すという方法です。ロング・インターバル走と呼んでもよいかもしれません。

 

テンポ・ランのプログラミング例:

  • 初心者:10分間テンポを1セットのみ
  • 中級者:10分間テンポ→3分間ジョグ→10分間テンポ (2セット)
  • 上級者1:10分間テンポ→2分間ジョグ→10分間テンポ→2分間ジョグ→5分間テンポ (3セット)
  • 上級者2:10分間テンポ→3分間ジョグ→10分間テンポ→3分間ジョグ→10分間テンポ (3セット)
  • エリート:30分間テンポ(休息なし、1セット)

 

最後に

元々、テンポ・ランをやってみようと考える人は真剣にタイムを追及しているランナーですので、上の例を見て、こんなに少ない練習量で効果があるのか、と疑問に感じる人がおそらく多いのではないかと思います。いくら速いペースを設定するにしても、そのペースで走るのは合計で30分間以下なのですから。

紹介しておきながら無責任のようですが、筆者自身もこのやり方で必ず効果があると断言する自信はありません。あくまで1例として、トレーニング計画を立てる際の参考にしてください。

 

角谷剛(かくたに・ごう)

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