長距離ランナーには以前からお馴染みの練習の1つに坂道インターバル走があります。100メートルほどの坂を、上りは全力で走り、下りはジョグでつなぎ、それを繰り返すというもので、心肺機能と脚力を同時に鍛えることができるトレーニング方法だと長い間信じられてきました。

 

故小出義雄氏の著書『30キロ過ぎで一番速く走るマラソン』にも坂道インターバル走についてこんな記述があります(p.110)。

「平地で行うインターバル走よりも短い距離、あるいは短い時間で心肺機能を鍛えられます」

「平地よりも格段に脚も鍛えられます」

 

小出氏も述べているように、坂道インターバル走は相当にきつい練習です。長距離ランナーに限らず、実際にこれをやって、死ぬような思いをしたことのあるアスリートは世の中に多いのではないでしょうか。

 

しかしながら、ただでさえきついインターバル走をさらに坂道でやる意味はあるのか? そのような疑問について調べたのが以下の研究です

 

The Effects of Incline and Level-Grade High-Intensity Interval Treadmill Training on Running Economy and Muscle Power in Well-Trained Distance Runners.

Ferley. D. et al., 2014

https://journals.lww.com/nsca-jscr/FullText/2014/05000/The_Effects_of_Incline_and_Level_Grade.16.aspx

 

研究方法:

32人の長距離ランナーを以下の3グループに分け、それぞれ6週間に渡って、週に数回の高強度インターバル・トレーニング(例:30秒間の全速力走を10~14セット)を行ってもらい、前後のVO2Max, 乳酸閾値60%のスピード、 乳酸閾値80%のスピード、跳躍テスト、筋力テストなどの値を比較。

 

  1. トレッドミルで10%の傾斜をつける
  2. トレッドミルで傾斜をゼロ
  3. 通常のトレーニング

 

結果:

トレッドミルを使った2つのグループは傾斜の有る無しにかかわらず、全ての測定値、特に心肺能力に向上が見られたが、筋力面の変化は少なかった。またグループ間には有意な差異はなかった。

 

トレッドミルを用いた理由と限界

 

論文著者らの結論は「トレッドミルのインターバル走にはランニング・エコノミーを向上させる効果はあるが、筋力を向上させる効果は伝統的なウェイトトレーニングやプライオメトリックに代わるものではない」ということです。

実験にトレッドミルを用いたことを、他の影響要因を排除し、スピード、傾斜、時間などを正確に測定するためだったとしていますが、そのことによって研究の限界が生じた可能性も認めています。特に筋力への効果については、トレッドミルでは着地衝撃が抑えられますし、ランニングフォームにも影響がありますので、実際に坂道でインターバル走を行ったときとおなじ結果になるとは断言できない、とのことです。

 

筆者の考察

 

少なくとも、この研究結果を見る限りは、トレッドミルを使ったインターバル走には効果はあるけれど、傾斜はつけてもつけなくても同じだよ、ということのようです。

トレーニングには「特異性の原則」というものがあります。1つのトレーニングには1つの効果しかない、万能なトレーニングは存在しない、ということを意味します。どうやら坂道インターバル走もその原則からは逃れられないということでしょう。インターバル・トレーニングの本来の狙いは心肺能力の向上です。それを行いながら、筋力も同時に鍛えようとするのはやはり無理があるようです。

とは言え、ここからは科学的でも客観的でもない全くの私見になるわけですが、坂道インターバル走には身体的な能力と精神的な根性を同時に鍛える効果がある、と極めて個人的には考えています。指導には使わないかもしれませんが、私自身は今後も続けるでしょう。

 

ライター

角谷剛(かくたに・ごう)

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