タバタ、あるいはHIITと言う言葉をトレーニングの現場でよく見聞きするようになりました。比較的短い時間で強度の高い運動を行い、それを休息あるいは負荷の軽い運動を挟んで繰り返すインターバル・トレーニングの手法の1つです。

HIITという用語は新しいのですが、実はその概念そのものは古くからあります。1912年ストックホルム・オリンピックで長距離3種目を制したハンネス・コーレマイネン選手は既にその頃から強度の強いインターベル形式のトレーニングを積んでいたことがわかっています。また、1952年のヘルシンキ・オリンピックでやはり5000m・10000m・マラソンの3種目で金メダルを獲得した『人間機関車』ことエミール・ザトペック選手もインターバル・トレーニングで有名です。

HIITという名をつけられ、また多くの研究でこの方法が短時間で心肺能力を飛躍的に向上させることが証明されると、ダイエットに励む人から競技ランナーにまで人気のトレーニング方法になりました。

伝統的には心肺能力を高めるためには有酸素系トレーニングのボリュームを増やす方法が広く行われてきました。もっとも単純な例で言えば、ランナーが月間走行距離を伸ばすことです。HIITはそれより効率的なトレーニングとしてもてはやされているわけなのですが、それに極端に偏るあまり、長時間の有酸素系トレーニングを減らすか、まったく行わない競技者も見かけるようになりました。

本当にHIITだけを行って競技パフォーマンスを上げることができるのか? 有酸素系トレーニングも同じように重要なのではないか? そのような疑問を抱く人は多いようで、数多くの研究が既になされています。

VO2maxに着目したメタ解析

Effectiveness of High-Intensity Interval Training (HIT) and Continuous Endurance Training for VO2max Improvements: A Systematic Review and Meta-Analysis of Controlled Trials.

Milanović Z, et. al 2015

https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-015-0365-0

研究内容:

6つの学術論文データベース(MEDLINE, PubMed, SPORTDiscus, Web of Science, CINAHL, Google Scholar) に掲載されている既存の論文を、次のキーワード( ‘high intensity’, ‘HIT’, ‘sprint interval training’, ‘endurance training’, ‘peak oxygen uptake’, and ‘VO2max’)で検索し、そこで得られた結果の中から28の論文を解析対象に選びました。

データを絞り込む条件を18歳から45歳までの健康な成人で、かつトレーニング期間を最低2週間以上かけたものとしました。結果として合計で723人のデータを検出しました。

そして被験者たちのトレーニング方法とその前後のVO2max数値の変化を解析しました。

結論:

長時間の有酸素系トレーニングとHIITはどちらも、健康な若年から中年の成人のVO2maxに大きな改善をもたらしますが、比較をするとHIITの方により大きな効果が認められました。

身体機能の適応に着目したレビュー論文

HIIT vs Continuous Endurance Training: Battle of the Aerobic Titans.

Micah Zuhl, Ph.D. and Len Kravitz, Ph.D., 2012

https://www.unm.edu/~lkravitz/Article%20folder/HIITvsCardio.html

研究内容:

長時間の有酸素系トレーニングとHIITを論じた既存の研究を分類し、心血管、代謝、そして骨格筋機能にどのような改善効果があるかを比較したもの。

結論:

長時間の有酸素系トレーニングとHIITがもつ身体機能への効果は優劣をつけがたいが、トレーニングにかかる所要時間が短い点で、HIITの方がより効率的な方法であると言える。

筆者の感想

長時間の有酸素系トレーニングとHIITのトレーニング効果を比較すると、どうやらHIITの方に分があるとした研究が多いようです。どちらも効果的だけど、どちらかと言えばHIITの方が優れている、あるいは効果は同等だから、それなら時間がかからないHIITの方が効率的、そのように結論づけることもできるかもしれません。

もちろん、こうした研究は身体機能を示すいくつかの指標をデータ化したもので、総合的な競技パフォーマンスへの影響を比較したものではありません。平たく言えば、HIITだけをやれば、長時間走るよりレースで良い結果が出るのか? という問いに答えられるものではありません。例えば、VO2max の数値が上がっても、競技パフォーマンスが必ず上がるとは限りません(参照記事:最大酸素摂取量(VO2max)とランニングパフォーマンスの関係について)。

競技パフォーマンスを決定する要素は多岐に渡ること、また競技者にある特定のトレーニング方法の実験に協力してもらうことが困難であること、その2つが先ほどの問いに答える研究が容易に見つからない理由だと私は考えています。

 

角谷剛(かくたに・ごう)

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