安倍首相が4月7日に新型コロナウイルスに関しての緊急事態宣言を発令した際の記者会見で、「今まで通り外に出て散歩したり、ジョギングをしたりすることは、何ら問題ありません」との発言がありました。散歩やジョギングは“密閉、密集、密接” の『3つの密』を回避して行うことができるからでしょう。問題がないどころか、閉鎖された状況で心身の健康を保つために、むしろ奨励されるべきだとは私は思いますが、今だからこそ気をつけなくてはいけないこともあるようです。

プロランナーの川内優輝さんは自身のツイッターで、「具体的なsocial distanceについてのコメントはありませんでした。しかし、世界各国の対策を参考に、他の人を不安にさせないためにも、『約2m』を常に意識して走るべきだと思います」と警鐘を発しました。

川内さんが指摘するソーシャル・ディスタンスは米国では6フィート(約1.8メートル)がよく使われ、ウイルス感染を防ぐために安全な人と人との間の距離だとされています。スーパーマーケットのレジなどでも、この距離を保って列に並ぶようにと床にテープが貼ってあります。

ところが、この距離は人々が静止した状態では十分に安全なのだけど、人が移動しているとき(歩いたり、走ったり、自転車に乗っているとき、など)はそれよりはるかに長い距離が必要になるとする論文が発表され、ランナーやサイクリストの間で話題になっています。

世界中のランナーに衝撃を与えた論文

Towards aerodynamically equivalent COVID-19 1.5 m social distancing for walking and running.

Blocken B., et. al 2020

http://www.urbanphysics.net/COVID19_Aero_Paper.pdf

オランダとベルギーの科学者たちによって行われたこの研究は、人が移動する際に生じる気流に着目して、微小粒子(ウイルス)がどれだけ拡散するか、あるいはどれだけ空気中に留まるかを実験しました。

それによると、静止している場合は片方から出た粒子はすぐに地面に落ち、1.5メートル離れていればかかりませんでした。つまりソーシャル・ディスタンスは有効でした。

しかし、人が複数で走ったときは、前方ランナーの口から出た粒子が気流に流され、後方のランナーにかかることがわかりました。

論文著者らは結論として、歩くスピードなら5メートル、キロ約4分(時速14.4キロ)のスピードで走るときは10メートル離れることを提唱しています。さらにランナーの位置にも注目し、縦列で走る際は、真後ろがもっとも危険だとしています。

上の実験内容をさらにわかりやすくビジュアルにしたのがこの動画です。

Facing COVID-19 Challenges: Maintain Social Distancing

もちろん、この研究は模型やコンピューターによる実験室内での物理的なシミュレーションですので、現実のランナーにコロナウイルスの飛沫感染リスクがどれほどあるのかまではわかりません。さほど神経をとがらす必要はないかもしれませんが、注意するに越したことはないでしょう。

まとめ: 安全に走るための優先順位

  • 1人で走る: これが一番です。もっとも孤島に住んでいない限り、他人とすれ違ったり、あるいは同方向で抜いたり、抜かされたりする局面が起きることは避けられません。

 

  • 他人との距離は10メートル以上空ける: 自動車のブレーキ同様、走るスピードが速ければ速いほど、飛沫感染を防ぐための安全な距離は遠くなります。

 

  • 縦に並ぶのではなく、横に並ぶ: どうしても複数で走るときは、横に並ぶほうが安全です。

 

  • 前後に並ぶときは、斜めに位置をずらす: 他人の真後ろには立たない、あるいは立たせない注意が必要なようです。

 

 

角谷剛(かくたに・ごう)

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