ダイエットのために走る人は多いでしょう。あるいはランのタイムを縮めるために体重を落とそうとする人もいるかもしれません。痩せるために走るか、それとも走るために痩せるか。目的と手段は人によって逆になるかもしれませんが、ランと体重は切っても切れない関係があります。

体重の増減を決めるのは基本的には摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスです。言うまでもありませんが、摂取エネルギーが消費エネルギーより多ければ太りますし、逆の場合は痩せます。

人はじっとしていても、生きている限りはエネルギーを消費します。それを基礎代謝と呼びますが、現代人が普通に1日3食を食べて生活していると、どうしてもその基礎代謝で必要とされる以上のエネルギーを摂取してしまいます。だから痩せるためには、その余剰エネルギーを消費するための運動がどうしても必要になるというわけです。

消費エネルギーの計算式 - METと体重

摂取エネルギーの量は何をどれだけ食べるかで決まります。ご飯一膳で250カロリー、お代わりしたら500カロリーという具合に、毎回の食事でカロリー計算をする手間をかけるかどうかは別にして、理論的には摂取エネルギーの計算はさほど難しいことではありません。基本的には足し算と掛け算ですので。

消費エネルギーの方は、少々複雑な計算式が必要になります。運動をすることによって、どれだけのエネルギーを消費するか?について、つまり運動強度ごとの消費エネルギー量を示すMET(Metabolic Equivalent)という指標があります。ただじっと安静に座っていたときを1 METとし、運動の種類によってその何倍になるかを示したものです。

METの一覧表は様々な団体が出していますが、ここではMedicine & Science in Sports and Exerciseという米国の学術雑誌に発表された論文を参考にします。

Compendium of Physical Activities: an update of activity codes and MET intensities

Ainsworth, B. et. al., 2000

https://journals.lww.com/acsm-msse/Fulltext/2000/09001/Compendium_of_Physical_Activities__an_update_of.9.aspx

この中からランに関する項目を抜粋すると以下のようになります。

3.0 MET: 散歩(時速4キロ)

9.0 MET: ゆっくりしたジョグ(時速8.4キロ)― マラソン5時間ペース

10.5 MET: ジョグ(時速10.8キロ)― マラソン サブ4時間ペース

11.8 MET: ラン(時速12.9キロ)― マラソン サブ3時間半ペース

12.8 MET: ラン(時速14.5 キロ)― マラソン サブ3時間ペース

 

これだけだと何が何だかよくわかりませんが、上のMET値と自分の体重を用いて、下の計算式で各運動を1分したときの消費エネルギー量を求めることができるのです。

1分ごとの消費エネルギー量(kcal) = 0.0175 x MET x 体重(kg)

仮に、体重60キロの筆者が30分ゆっくりジョグしたとすると、消費エネルギーは以下のようになります。

0.0175 x 9 (MET) x 60(体重) x 30(分) = 283.5kcal

同じことを体重100キロの人がするとこうなります。

0.0175 x 9 (MET) x 100(体重) x 30(分) = 472.5kcal

同じ30分ジョグでも体重が40キロ違うと、消費カロリーはこれだけの差が出ます。逆に言うならば、体の小さい人は大きい人と同じだけ食べているとエライことになるよってことです。

同じ距離ならゆっくり走る方が痩せる

METは1分ごとの単位ですので、消費エネルギーの総量は時間との掛け算になります。METが低い運動でも長時間続けると、最終的にはMETが高い運動を短時間するより、合計の消費エネルギー量が多くなることもあります。ランに置き換えますと、同じ距離を走るのならば、ペースが遅いとゴールまでかかる時間は長くなるので、かえって消費エネルギーは高くなることもあるわけなのです。

フルマラソン(42キロ)をサブ3で走る人は5時間かけて完走する人よりはるかにエライと思われがちですが、ダイエットという観点から見ると必ずしもそうではありません。

再び、ランナーの体重を60キロと仮定として、フルマラソンを走った場合の消費エネルギーを計算してみると以下のようになります。

サブ3ペース:0.0175 x 12.8 (MET) x 60 (体重) x 180(分) = 2419.2 kcal

5時間ペース:0.0175 x 9.0 (MET) x 60 (体重) x 300(分) = 2835 kcal

つまり、フルマラソンを3時間で走るより、5時間かけて走る方が消費エネルギーは大きいのです。制限時間ぎりぎりでゴールした市民ランナーはトップでゴールしたエリートランナーよりたくさん食べても大丈夫なのです。

それではもっと遅かったらどうでしょうか。散歩(時速4キロ)のペースで42キロを歩くと、計算上では10.5時間(630分)かかります。もちろん、実際には休憩や食事も入るでしょうが、ここでは消費エネルギーだけを計算してみると、下のようになります。

散歩ペース:0.0175 x 3 (MET) x 60 (体重) x 630(分) = 1984.5 kcal

さすがに歩くのと同じペースでは、いくら長時間かけても消費エネルギーは少なくなるようです。

ゆっくり時間をかけて長い時間を走るトレーニング方法をLSD (Long Slow Distance)と呼びますが、少なくともダイエット効果は高いことがこのことからも分かるでしょう。

 

角谷剛(かくたに・ごう)

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