ウォーキングが心身の健康によい影響をもたらすことはよく知られています。「森林浴」という言葉があるように、自然の中に身を置くことに癒し効果があることも知られています。それならば、自然の中を歩くハイキングは相乗効果でもっと素晴らしい、となることは何ら不思議ではないのですが、それを心理学的アプローチで証明した研究があります。

自然の中のハイキングと街中のウォーキングを比較

不安や心配事などのネガティブな考えを脳から追い払うことができず、繰り返し反芻してしまうことを、心理学用語では「Rumination」と呼びます。程度の差こそあれ誰にでもあることなのですが、この「Rumination」が過ぎると、不安障害やうつ病、さらには過食症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの他の深刻な問題の原因につながることがあります。

この「Rumination」を抑えるために、どのような身体的活動が脳に効果があるかを調べたのが下の研究です。

Nature experience reduces rumination and subgenual prefrontal cortex activation.

Bradman, G. et. al., 2015

https://www.pnas.org/content/112/28/8567

研究では38人の被験者を2グループに分け、それぞれ90分間のウォーキングを行ってもらいました。但し、1つのグループは片道3~4車線があるパロ・アルト市のダウンタウンを歩いてもらい、もう1つのグループにはスタンフォード大キャンパスの近くにある森の中を歩いてもらいました。それぞれのコースの写真が上の論文に表示されています。

90分間のウォーキングの後で実験室に戻った被験者たちに聞き取りと脳波のスキャンをした結果、自然の中を歩いたグループには明らかな「Rumination」の低下が見られ、さらには精神病の原因につながる前頭前皮質の活動が抑えられていたことがわかりました。これらの効果は街中を歩いたグループにはありませんでした。

都会を離れて自然に向かおう、との提案

論文著者らは現在において世界人口の50%が都心部に住み、その数字は2050年には70%になると指摘しています。そして都会へのさらなる人口集中が、うつ病や他の精神疾患に苦しむ人を増やしていく懸念があるとしています。

だからと言って、すぐに都会から脱出しようと引っ越しをするわけにはいかない人が多いのは言うまでもありませんが、それでもなるべく自然の中に身を置くことで、精神的な健康に大きな効果が期待できるようです。第一、上の実験で使われた森林と街中はそれほど離れた場所で行われたわけではなく、せいぜい車で10分ぐらいの距離なのです。

ランナーなら、たまには陸上トラックや都心でのランから離れて、トレイルランや緑の豊かな公園内でのジョグを試してみるのも精神衛生上には良いのかもしれません。

 

角谷剛(かくたに・ごう)

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