下半身を鍛えるための筋トレと言えば、スクワットを思い浮かべる人は多いでしょう。バーベルを担いでも、あるいは自重だけでも、膝を屈伸させて腰を落として立ち上がる。一見単純に見える動作ですが、実は複数の関節を動員して行う複合関節動作です。そのため、スクワットで鍛えられる筋肉群も多岐に渡ります。主には臀部(でんぶ)、ハムストリングス、大腿四頭筋。それ以外にも、ふくらはぎ、腰、背中などが挙げられます。スクワットこそ筋トレの王道だと呼ぶ人もいます。

スクワットはブレーキをかける筋肉をつけてしまう?

ところが、このスクワットの効果に疑問を投げかける人もいます。世界陸上400mハードルで2度の銅メダルを獲得した、元プロ陸上選手の為末大さんもその一人。為末さんは著書『日本人の足を速くする』(著者:為末大/出版社:新潮社)の中で、日本人がスクワットをやり過ぎると膝上の筋肉のみが発達してしまうから、ランナーはむしろスクワットをやらない方がよいと述べています。

速く走るためのパワーは臀部やハムストリングスなど主に体の後ろ側にある筋肉から生み出されます。太腿の前側、とくに膝上の筋肉はむしろブレーキをかけるときに使う筋肉です。スポーツの種類によってはブレーキをかける能力も大切ですが、少なくとも長距離、短距離にかかわらず陸上ランナーには必要ありません。むしろ前に進む動作の邪魔になります。スクワットをすることで、せっせとブレーキをかける筋肉を鍛えているのだとすれば、これはランナーにとっては由々しい問題だと言えるでしょう。

上でも述べたように、本来ならスクワットは体の前も後ろも鍛えることができるワークアウトです。しかし、柔軟性に欠けるなどの理由で誤ったフォームでスクワットを行っていると、体の前面にある大腿四頭筋だけが発達してしまい、体の後ろ側にある臀部やハムストリングスがあまり鍛えらないことも確かにあります。

ヒップ・スラストで足が速くなる - 新研究

それでは速く走るために効果的な筋トレ種目は何なのか? この疑問について調べたのが下の研究です。

Effects of 7-Week Hip Thrust Versus Back Squat Resistance Training on Performance in Adolescent Female Soccer Players.

González-García, J. et. al., 2019

https://www.mdpi.com/2075-4663/7/4/80/htm

 

スペインの研究者たちが24人の10代女子サッカー選手たちを対象に、7週間の筋トレを行ってもらい、スクワットとヒップ・スラストのどちらが20メートル走のタイム向上に効果があるかを調べたものです。

その結果、ヒップ・スラストを行ったグループの方にスプリント能力、特にスタート時の加速により大きな向上が見られました。

被験者のサンプル数が少ない(24人)こと、またその属性(年齢、性別、スポーツ歴)も偏っていることなど、この研究の信憑性を疑う理由はいくつかあります。しかし、筋肉の特性と動作がどう関連するかは、年齢や性別による違いより、むしろ共通点の方が多いと私は思います。

短距離を速く走るにはスクワットよりヒップ・スラスト。この結論を私は支持します。同じように考える人が多いのでしょう。最近はヒップ・スラストに取り組むスプリンターや野球選手などをジムでよく見かけるようになりました。

ヒップ・スラストのやり方

ヒップ・スラストは現在のところはそれほど一般的な筋トレ種目ではありませんので、やり方がわからないという人も多いでしょう。一番良いのはジムで経験のあるインストラクターに尋ねることなのですが、何らかの理由により自分でやってみたいと思う人は下の記事を参考にしてください。

「お尻」と「腰」を鍛える筋トレをレベル別に解説。メニュー・やり方・回数・効果を高めるポイント

角谷剛(かくたに ごう)

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