気分がひどく落ち込んでしまったときや、抑うつの症状に苦しんでいるときは、ジムに行って筋トレをすることが最高のセラピーなのだという話を耳にしたことはあるでしょうか?

ハーバード大の研究

筋トレには身体的なメリットがあることは広く知られていますが、それと同時に心理学的なメリットも多いことが最近の研究で次々と明らかになってきています。その1つ、米ハーバード大の研究では重い重量を挙げるエクササイズが臨床学的にうつ病の症状を緩和するのに役立つことを証明しました(*1)。

驚いたことに、1990年代から続けられたこの研究では、より重い重量に挑んだ人ほど、よりうつ病からの改善が見られたということです。

デューク大の研究

同じような研究がデューク大でも行われました(*2)。この研究では40分の筋トレを週4回、それを4か月続けることによって、多くのうつ病患者が医薬治療の助けを受けることなしに回復したケースを報告しています。デューク大の研究者たちは50分の筋トレを毎週行うごとにうつ病に罹る可能性が半減するとも述べています。

筋トレが脳に及ぼす影響とは

どうやら、筋トレにはかっこいい体を作りあげる、健康になる、といった一般的に知られたもの以外にも、心理学的なメリットが数多くあるようなのです。筋トレをすることによって、睡眠が改善され、活力が生まれ、加齢による衰えもある程度戸遅らせることができます。そうしたことが精神的な安定に繋がるようです。

米国国立衛生研究所の発表によれば、なぜ筋トレが抑うつの症状を改善に役立つかの理由については、いくつかの仮説が考えられるそうです。その1つは筋トレによって基礎体温が上昇し、そのことが脳をリラックスさせ、また緊張を解く効果を生むということです。また、筋トレはエンドルフィンを放出させ、それがポジティブな感情と全体的な幸福感を引き起こしますことも考えられるそうです。 同じように、筋トレは抑うつ患者の脳内に不足しがちなドーパミンとノルエピネフリンのような神経伝達物質を増やす効果もあるのだということです。

筆者の考察

これらの仮説のどれが正しくて、どれが正しくないのかは、医学専門家の今後の研究に任せるとして、筋トレには不安やネガティブな考えから人を解放するメカニズムが潜んでいるのではないか、とは筋トレを長く続けている私の実感でもあります。

なぜなら重い物を今まさに持ち挙げようとしているとき、人は余計なことを考えている余裕はありません。もちろん、どれだけ筋トレで疲れ果てたとしても、抱えている問題が消えてなくなるわけではありませんが、一時的にではあってもネガティブな考えを頭から追いやることができます。その点、落ち込んでいるときにジョギングなどのゆるやかな運動をすると、余計そのネガティブな考えが頭の中を占領してしまうことがあります。

さらに、筋トレとはやればやるほど結果が出るエクササイズです。日常的に筋トレを行う人は、常に小さな達成感を得ることができるのです。重量挙げの選手やボディビルダーのように競技で行うとなると話は別になりますが、普通は筋トレには競う相手は存在しません。スポーツにつきものの勝敗がないのです。よく「昨日の自分がライバルだ」という表現が使われますが、初心者レベルなら筋トレで自己記録を更新し続けることはさほど難しいことではありません。いわば失敗も敗北もないスポーツだと言ってもよいでしょう。その筋トレの際立った特徴が精神を安定させるうえで重要な自己肯定感を与えてくれるのではないでしょうか。

できるだけ多くの人が筋トレを試し、幸せな日々を手に入れることができますように。

参照文献:

*1.

Strengthen your mood with weight training.

https://www.health.harvard.edu/mind-and-mood/strengthen-your-mood-with-weight-training

 

*2.

Is Exercise a Viable Treatment for Depression?

Blumenthal J, et. al., 2013

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3674785/

 

角谷剛(かくたに ごう)

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