インターネットには筋トレやワークアウトに関するたくさんの動画が溢れていますが、その中の1ジャンルに○○チャレンジというものがあります。何かの動作をやってみせて、君もこれができるかい?と問うものです。特に新型コロナウイルス危機が始まって以来、様々なチャレンジがSNSで拡散され、話題を呼んでいます。

今回紹介する”Impossible Push-Up” は比較的最近になって流行ったものです。直訳すると「不可能な腕立て伏せ」。最初にその言葉を聞いたときは、100回連続とか合計1000回とか、やたら多くの回数をこなす根性系のワークアウトかと思ったのですが、実はその真逆でした。腕立て伏せの回数はたった1回、しかしそれに3分間かけるというものです。

90秒で下りて、90秒で上がる

Impossible Push-Upのルールは単純です。ハイプランクの状態から90秒かけてゆっくりゆっくり下ろし、胸を床に着けて一瞬静止、その後さらに90秒かけてゆっくりゆっくり上がり、元のハイプランクの状態に戻る。

動画のリンク:https://www.youtube.com/watch?v=Eg2vnVSZWKs

私も挑戦してみましたが、とても無理でした。40秒ぐらいでギブアップしてしまいました。普通のスピードで行う腕立て伏せなら200回や300回だってやったことがあります。でも、この3分間で1回の腕立て伏せにはまったく歯が立ちませんでした。 まさに ”Impossible” です。「言うは易く行うは難し」という言葉がこれほど似合うワークアウトはあまりないのではと思います。

ちなみにこれと同じやり方で鉄棒の懸垂もあり、Impossible Pull Upと呼ばれています。こちらは1分で上がって、1分で下がるそうです。

不可能だなんて大げさなこと言うけど、本当か?と疑う人はぜひご自分の体で試してください。どこでもできますし、かかる時間も3分間だけですので。もちろん、動画のようにできる人も広い世界にはいるわけですので、正確には不可能ではないことはわかっています。

腕立て伏せの正しいフォーム

もっとも腕立て伏せのフォームでインチキをしたら話は別になります。下のすべてを守った腕立て伏せを行うことが、このチャレンジの大前提になります。

  • 両手を肩幅の広さに置く
  • 両足を揃える
  • 膝は曲げない
  • 肩からかかとまで体は折り曲げずに1直線に保つ
  • 両肘を伸ばし切ったところからスタート
  • 胸を地面につけるまで下げて、そこで一瞬静止
  • 再び両肘が伸び切るまで上げる

 

要は体を曲げないこと、手のひら、つま先、そして胸以外は地面に着けないことがルールです。あとはゆっくり、できるだけ均等なスピードで上下することが重要です。

スロートレーニング

素早くやるなら簡単にできる動作でもゆっくり時間をかけることで負荷を高めることができる。これ自体は決して新しい考え方ではありません。筋トレ歴が長い人は「スロートレーニング」という言葉を覚えているのではないでしょうか。2000年代前半ぐらいに、日本人メジャーリーガーのパイオニアでもある野茂英雄氏も行っていたトレーニング法だということで、日本でもかなりの注目を浴びました。

「スロートレーニング」とは文字通りゆっくりしたスピードで筋トレを行うこと。非常にわかりやすい呼称だと思いますが、実はこれは和製英語です。その元になった、いわば原語は”High-Intensity Training”で、よく“HIT”と略されます。

最近流行の”High-Intensity Interval Training” (HIIT) と紛らわしいのですが、”HIT”は1970年代に始まった理論ですので、言葉としても理論としても、こちらの方が老舗です。

勿論、「スロートレーニング」は上で紹介したImpossible Push-Upのように極端なものではありません。一般的なメソッドは”3-1-4-1”と呼ばれ、様々なワークアウトに取り入れることができます。

これを腕立て伏せに当てはめると、4秒かけて下ろし(ネガティブ動作)、1秒間静止し、3秒かけて上がり(ポジティブ動作)、1秒間静止した後で、次の回に移るということになります。これを6~10回ぐらいで1セットとし、間に休憩を入れて数セット行います。大抵の人はこれだけで腕や胸の筋肉がパンパンに張ります。スクワットなど下半身のエクササイズでは1セット内の回数を10~15回ぐらいに増やしますが、やり方は同じです。

ゆっくりした動作で筋トレを行うメリット

  • 動作自体はゆっくりでも、1回ごとの負荷が大きいので、トータルすると少回数、短時間で済む。
  • 通常より扱う重量が軽くなり、関節に過度の負担がかからないので、怪我のリスクが低くなる。
  • 反動を利用できないので、筋肉を効率的に鍛えることができる。

 

「スロートレーニング」は最先端のトレーニング理論というわけではありませんが、決して今でも否定されているわけではありません。むしろ、長い年月をかけて有効性が検証された方法だと言えるかもしれません。回数や重量を増やして負荷を高めるのは筋トレの王道ですが、このように目線を変えてみるのも良いのではないでしょうか。

 

角谷剛(かくたに ごう)

コメント一覧

全1件のコメント

  1. 2020年7月11日 15:09

    […] 腕立て伏せの正しいフォームについては前回の記事で紹介しました。このフォームを厳格に守ったうえで、回数を増やしていかなくては、十分な効果は期待できません。 […]

コメントする

コメントを投稿するにはアカウントを作成し、ログインしている必要があります。