8月の通しテーマは「ダンベル」です。ダンベルを知らない人はあまりいないとは思いますが、簡単に説明しますと、別名「鉄アレイ」と呼ばれることもある、短い棒の両端に重りがついた器具のことです。どのジムにもありますし、自宅でも比較的簡単に用意できる器具でもあります。

ダンベル(あるいはダンベル状のモノ)を使ったワークアウトは、なんと紀元前のギリシャや1000年以上前のインドまで遡ることができるそうです。まさに世界最古で、かつ現在でもっともポピュラーなトレーニング器具のひとつと呼んでいいでしょう。

古いモノほど奥が深く、ダンベルを使った筋トレは何百通りもの種類があります。それらの中から、今回は単関節運動と複合関節運動という観点について述べてみたいと思います。

単関節運動とは

単関節運動とは1つの関節だけを動かす運動のことです。ダンベルで単関節運動と言えば、例えばダンベル・カールです。直立してダンベルをぶら下げて持ち、肘(だけ)を折り曲げてダンベルを持ち上げる。この動作で鍛えられるのは腕の力こぶの部分、つまり上腕二頭筋(bicep)のみです。そのため、Biceps Curlsと呼ばれることもあります。

このように、単関節運動はある特定の筋肉を集中して鍛えることができます。別の言い方をするならば、ボディビルダーらがよく言うように、筋肉に「効かせる」ことができるワークアウトです。

複合関節運動とは

それに対し、複合関節運動とは2つ以上の関節を動かす運動のことです。全身運動とも、機能的動作とも言われるように、日常動作でも多くのスポーツ動作でも使われるのが複合関節運動です。

ダンベルを例にとりますと、ダンベル・ショルダー・プレスを思い浮かべてください。ダンベルを肩に担ぎ、肘を伸ばして頭上に持ち上げる動作です。この動作で使われるのは肩と肘の関節です。

複数の関節を動かすということは、複数の筋肉が動員されるということでもあります。ダンベル・ショルダー・プレスは一見して単純な動作で、難易度は単関節運動のダンベル・カールとさほど変わりません。しかし、ダンベル・カールが上腕二頭筋だけしか鍛えられないのに対し、ダンベル・ショルダー・プレスでは三角筋(肩の前部、中部、後部)や胸の上部、それに上腕三頭筋など、数多くの筋肉を同時に鍛えることができます。

複合関節運動が優れている点

多くの筋肉を鍛えること以外にも、複合関節運動には様々なメリットがあります。第一に、より多くの筋肉を動員するので、高重量を扱うことができることが挙げられます。つまり、個々の筋肉により強い刺激が与えられるのです。さらにはより多くのエネルギーを消費するので、副次的に心肺能力の向上にも繋がります。

ダンベル・ショルダー・プレスにも、ベンチに座って行う方法と立って行う方法がありますが、立って行う方法を選択すると、動作においてバランスが必要とされ、神経系の発達も期待できます。

そのため、運動能力の向上を目的とするならば、複合関節運動の方が効果的だと言ってよいでしょう。同じボリュームのトレーニングを行うならば、複合関節運動は単関節運動より、最大筋力と最大酸素消費の両方に効果があるとした研究もあります(*1)。

単関節運動の意外なデメリット

それでもあえて単関節運動を選択して、ある特定の筋肉を集中して鍛えたとしましょう。その筋肉への刺激が強くなるということは、つまり筋繊維をより傷つけてしまうということです(前回記事「筋トレ101 その8:超回復と分割法」を参照してください)。

つまり、それだけ筋肉の回復に時間がかかることを意味します。単関節運動は運動量が少ないにもかかわらず、筋肉痛になりやすいのです。ある研究では、片方の腕でカール(単関節運動)を、逆の腕ではプーリーロウ(複合関節運動)を同じセット数行ったところ、プーリーロウを行った腕の回復時間は24時間、カールを行った腕のそれは96時間近くにもなりました(*2)。それだけ筋肉を追い込んだという自己満足には繋がるかもしれませんが、トレーニング計画を立てる上ではマイナス要素の1つです。

まとめ

上のことから、単関節運動と複合関節運動を比較するなら、私は複合関節運動をお勧めします。しかし、筋トレでは必ず1つの動作だけを選ばないといけないわけではありません。複合関節運動をまずメインで行い、サブに単関節運動を行ってもよいのです。その場合、順番を逆にして、単関節運動を先に行ってしまうと、筋肉が疲労してしまって、メインの複合関節運動で十分な効果を得られないことがありますので注意してください。

 

参考文献:

*1.

Resistance Training with Single vs. Multi-joint Exercises at Equal Total Load Volume: Effects on Body Composition, Cardiorespiratory Fitness, and Muscle Strength.

Paoli, A., et. al., 2017

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5744434/

 

*2.

Dissociated Time Course of Muscle Damage Recovery Between Single- and Multi-Joint Exercises in Highly Resistance-Trained Men.

Soares, S., et. al., 2015

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25807025/

 

角谷剛(かくたに ごう)

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