前回に通いて「ダンベル」の話から始めます。ダンベルが何千年もの歴史をもつ世界最古のトレーニング器具であることは前回述べましたが、それに並ぶ伝統的なトレーニング器具と言えば「バーベル」でしょう。

言うまでもありませんが、バーベルは長い棒の両端にプレートをつけることで重さを調節します。ダンベルとバーベルのどちらがより伝統的かと言えば、断然ダンベルの方が古いようです。ある研究者によれば、バーベルが存在したと証明できるのは、せいぜい1800年代になってからということです(*1)。どうやらダンベルというものがずっと以前からあって、それを長くしてみようと考えた人がいたようです。

現在ではオリンピック競技である重量挙げ(スナッチとクリーン&ジャーク)ではバーベルが使われますし、パワーリフティング(スクワット、デッドリフト、ベンチプレス)で使われるのもバーベルです。

はるかに長い歴史を持ちながら、重いモノを持ち挙げる競技ではバーベルに取って代わられたということは、ダンベルはバーベルより劣った器具なのでしょうか?

ダンベルとバーベルの違い

棒部分の長さ以外で、ダンベルとバーベルが大きく異なるのは、バーベルは普通両手で握るのに対して、ダンベルは片腕でも、両腕でも、ワークアウトができるということです。その利点は3つあります。1)片腕あるいは片足だけで行うか、体の片側に大きく負荷をかける「Unilateral Training(ユニラテラル・トレーニング)」がやりやすいこと、2)左右の腕に異なった負荷をかけやすいこと、3)動作範囲を広くとれることです。

1)Unilateral Training (片側運動)とは

前回紹介したダンベルを使った代表的なワークアウトの1つであるダンベル・ショルダー・プレスを例にするならば、右手か左手だけでダンベルを持ち、それを肩から頭上に持ち挙げるのがUnilateral Training (片側運動)です。

当然のことながら、鍛えられるのはダンベルを持った方の肩と腕だけなのですが、どちらかに故障を抱えているときなどは便利です。同じような動作であっても、バーベルを使ったショルダー・プレスを思い浮かべてください。どちらかの肩や腕を故障してしまうと、故障していない方も鍛えることができません。

さらに体の片側だけで重いモノを持つわけですので、体を支えるバランス感覚と体幹部分の筋力向上に役立ちます。

2)左右の筋力バランスを整える

肩は左右の筋力に差が出やすい部分です。大半の人は利き腕の側が強くなります。ダンベル・ショルダー・プレスを片腕ずつ行うと、右と左で扱える重量や回数に違いが生じることはむしろ普通です。

つまり、ダンベルを片腕ずつ行うことで、左右の筋力差を容易に把握することができます。自分の弱点を見つけたら、あとはそれを克服するだけです。弱い方のトレーニング量を増やして、その差を埋めていくにも、ダンベルはとても便利な器具なのです。

ここでもバーベルと比較してみましょう。バーベル・ショルダー・プレスの記録が伸び悩んだとします。そのようなときはひょっとしたら、右肩か左肩のどちらかの筋力が極端に弱いのかもしれません。しかし、バーベルを両手で握るやり方だと、強い方が弱い方を助けてしまい、弱点がそのままになってしまいがちなのです。

3)可動域いっぱいに筋肉を動かす

ダンベルは動作範囲を可能な限り広くすることができます。バーベルを用いた場合、両手の位置は握ったところに固定されて、動作中に変えることはできません。一方、ダンベルを用いた場合、両腕の動きが自由なので、より大きく腕や肩を伸ばせますし、より深く肘を曲げることも可能になるのです。試しに壁の高い所に手を伸ばしてみてください。両腕を上げるより、片腕を上げる方が、高い所に手が届くはずです。

動作範囲を広げることで、より多くの筋肉を動員させ、筋肉にかかる負荷を増やすことができるので、トレーニング効果も高まります。

専用の機械を使った「マシントレーニング」に対して、ダンベルやバーベルは「フリーウエイト」の代表例とされるものなのですが、ダンベルはその中でもより自由度が高いと言えるでしょう。

参照記事:筋トレ101 その1:フリーウエイトとトレーニングマシンのどちらを選ぶ?

まとめ

重量挙げやパワーリフターを目指すなら、バーベルを使ったトレーニングは競技そのものですので、もっとも重要視するべきでしょう。しかし、筋トレを補助トレーニングとして捉え、他のスポーツに役立てたいと思う人は、ダンベルも積極的に取り入れることをお勧めします。筋トレで筋力を向上させると同時に、筋肉のバランスも整えていくことが、パフォーマンスを上げるうえでも、ケガを予防するうえでも、望ましいからです。

参考文献:

*1.

A brief history of the barbell

Heffernan C. 2017

https://physicalculturestudy.com/2017/02/28/history-of-the-barbell/

 

角谷剛(かくたに ごう)

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