前3回に渡って「ダンベル」とダンベルを切り口にした筋トレの基本的な考え方を紹介してきました。今回は、その考え方を実践に移す際に最初の問題となるダンベルの選び方について説明したいと思います。

ジムにはなぜあれほど多くのダンベルが並べてあるのか

本格的なジムのフリーウェイトスペースを訪れたことがある人は、壁一面のラックに大小様々なダンベルが並んでいるのを見たことがあるでしょう。最も軽い1~2kgぐらいのものから、5kg、7.5kg、10kg、12.5kg、15kg、17.5kg、20kgと小刻みに重いものが並べられ、最重量になると50㎏を越えるものもあります。なぜこれほど多くの種類が必要になるのかと疑問に感じる人もいると思います。5kgと10kgの違いなら想像できても、45㎏と47.5㎏を分けることにどれだけの意味があるのか?と思ってしまうのはもっともだからです。

もちろん、これだけ細かく、かつ広範囲に渡って、ダンベルの重量が分かれていることには、それだけのちゃんとした理由があります。

筋トレの種目による違い

同じ人がダンベルを使う場合でも、ファーマー・キャリー(ダンベルをぶら下げて歩く)をするときと、バイセップ・カール(ダンベルを握って腕を折り曲げる)をするときでは、扱える重量がまったく異なります。これは極端な例ですが、筋トレの種目ごとにはそれぞれ適した重量がありますので、幅広いトレーニングをしようとすればするほど、なるべく多くの異なった重量のダンベルが必要になるわけです。

筋トレの目的とプログラミングによる違い

同じ人が同じ種目の筋トレを行うときであっても、その目的を筋肥大におくのか、それとも持久力向上を目指すのかによって、こなすべき重量や回数は異なってきます。原則として、前者は高重量低回数、後者は低重量高回数で行うべきなのですが、人によってはその目的が時期ごとに異なることもあるでしょう(例:オフシーズンは筋肥大、シーズン中はスピード重視、など)。ここでもやはり、なるべく多くの異なった重量のダンベルがある方が望ましいわけです。

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また、高重量で筋トレを行うときは、いきなりその最重量に挑むわけではありません。例えば1RM(1回だけ挙げることができる限界の重量)を測定するときは、そのウォームアップとして、1RM の50%, 60%, 70%と、ここでも小刻みな重量設定を行うのが一般的な方法です。

筋トレの成長過程による違い

さらには、筋トレの基本中の基本である「過負荷の原理」を忘れてはいけません。負荷をかけないと筋肉は成長しません。そして、その負荷は徐々に大きくしていかなくてはいけません。仮に同じ種目を同じ回数だけを毎日こなし続けたとしても(例:10回を3セット)、同じ重さのダンベルを挙げ続けていては、筋肉の成長は望めません。

筋トレを始めると、最初の頃は筋肉痛になるばかりで、一時的には筋力は低下します。その後も我慢して続けていると、身体はその負荷に適応して、筋肥大や筋力増加などの効果が表れます。その成長軌道はある程度までは右肩上がりで続きますが、身体がその負荷に慣れてしまうと、筋トレ効果は上がりにくくなってしまいます。つまり、身体が筋トレからの刺激に馴化してしまうのです。

その馴化を防ぐには挙上重量を上がるのがもっとも手っ取り早く、しかもその変化は少しずつであることが望ましいことは言うまでもありません。ジムが2.5㎏(ときには1㎏)のように細かい単位で異なる重さのダンベルを揃えているのはその為です。

ダンベルの種類:重量固定型か可変型か

ダンベルには、大きく分けて2つの種類があります。重量を変更できない、伝統的な種類を「固定型」、重量を変更できる種類を「可変型」とここでは呼びます。それ以外にも、ダンベルの材質、形状、シャフトの長さなど、様々な要素がありますが、ここでは重量設定の方法に話を限定します。

購入資金、収容スペース、トレーニング環境、その他もろもろの制限を度外視するなら、最初の例に挙げた本格的なジムのように、できるだけ多くの種類の「固定型」ダンベルを揃えるのが理想です。

しかしながら、大多数の人にとっては、自宅用にダンベルを用意するときには、「可変型」を選ぶ方が現実的な選択肢になるでしょう。重量を変更できるうえに、スペースも最低限の広さで済むからです。

可変型のダンベルの多くはシャフトにプレートを付け替えることによって重量を調整する仕組みになっています。いわば、短いバーベルです。この可変型ダンベルの問題点は2つあります。重量を変更する際に手間がかかることと、構造が複雑になるために壊れやすくなることです。その点は従来の固定型ダンベル(別の名を鉄アレイ)にはかないません。

一生モノの買い物?

最近はダイヤルやスイッチなどで、簡単に重量を変更できるダンベルも市場で売られるようになりました。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くのジムが閉鎖されたこともあって、自宅トレーニング器具が軒並み売り上げを伸ばしていますが、こうした新工夫の可変型ダンベルも人気を集めています。下の『Bowflex』社の製品もその1つです。

製品例:

Bowflex SelectTech 552調節可能なダンベル(Single)

問題はやはり価格が高くなることでしょう。特に輸入品は今のところ海外との価格差が非常に大きいです。日本のアマゾンでは¥211,794の価格がついたこの製品(2020年8月17日のデータ)、米国のアマゾンでは$489.00 (約¥51,852)で販売されています。あまりと言えばあまりの価格差ですので、日本の運動器具メーカーもひとつ頑張って、良い国産品を提供してほしいものです。

これまで何回も述べてきましたように、ダンベルはとても汎用性の高い器具です。これ一つさえあれば、ありとあらゆる筋トレが可能になります。高いおカネを払う価値はあるとは思いますが、購入するにはある種の決断が必要とされるでしょう。

角谷剛(かくたに ごう)

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