筋肉を作り上げる材料としてたんぱく質を前回の記事で取り上げました。しかし筋肉は発達させただけでは、何の働きもしません。それを動かすエネルギー源が必要になるのです。

今回取り上げる「クレアチン」は特に短時間で高強度の運動をする際に筋肉のエネルギー源となる栄養素です。具体的には、陸上の短・中距離走系や投擲系、重量挙げ、格闘技、野球などのスポーツのパフォーマンスを向上させる効果があります。

短時間、高強度のパワー源となるクレアチン

人間の身体には筋肉を動かす3種類のエネルギー・システムがあり、それぞれには以下の特徴があります。

 

  • 1) ATP-CP系:クレアチンを主な材料とし、瞬発力を発揮するパワー系の運動に使われる。持続時間は約6~8秒。
  • 2) 乳酸系: 炭水化物を主な材料とし、無酸素運動に使われる。持続時間は約30~60秒。
  • 3) 有酸素系:糖質や脂肪を主な材料とし、長時間の有酸素運動に使われる。持続時間は1分以上。

 

これらは別々に働くわけではありませんが、分かりやすく走ることに例えるならば、短距離を全力で走るときにはATP-CP系のシステムが筋肉を動かし、中距離のスピードを維持するためには乳酸系、長距離の持久力には有酸素系のシステムがそれぞれ使われるということです。

クレアチンの効果

筋トレに関しては、クレアチンは高重量低回数のパフォーマンスを上げる効果があります。米国の大学アメフト選手を対象にしたある研究 (*1)では、クレアチンを摂取したグループとプラセボ(偽薬)を摂取したグループを比較すると、10週間のトレーニング期間後に前者のベンチプレス、スクワット、パワークリーンの1RM挙上重量がどれも大きく向上したということです。

筋トレで扱える重量が増えるということは、筋肉により多くの負荷をかけることができるということですので、パワーやスピードを必要とするアスリートがこぞってクレアチンを求めるのは無理もありません。2004年とやや古い研究(*2)ですが、やはり米国の大学アスリートの37.2%がクレアチンを日常的に摂取し、そのうちの80%以上がパワー系アスリートで占められるとのことです。

なぜクレアチンをサプリメントで摂取するのか

ところで、クレアチンは食事から摂取できる栄養素です。主に肉や魚に含まれています。しかし、普通クレアチンと言えば、サプリメントから摂取することを言います。

それは食物に自然に含まれているクレアチンの含有量ではパワー向上の効果を出すためのクレアチン量にはるかに足らないからです。

後述しますが、意識してクレアチンのサプリメントを摂取する場合、1日あたり5~20gが目安になります。ところが、仮に牛肉や豚肉、あるいはマグロなどの魚を1キロ(!)食べても、それに含まれるクレアチンは3~5g以下なのです。

またクレアチンは熱に弱いので、なるべくなら食物を加熱しないで食べる必要があります。刺身などは理想的なのですが、毎日1キロ以上の刺身を食べ続けられる人はあまりいないでしょう。

クレアチンの摂取方法:ロード期間とメンテナンス期間

クレアチンのサプリメントを摂取するとき、大きく分けて2つのパターンが推奨されます。どちらも1回の摂取量を4~7g程度とします(体重によって異なる)。

  • パターン1:最初の1週間をロード期間として、1日に4回摂取する。ロード期間を終えると、メンテナンス期間として1日1回の摂取を続ける。

 

あるいは

  • パターン2:1日1回の摂取を最低でも4週間以上続ける。

 

どちらの方法でも、クレアチンの効果は摂取を開始してから1~4週間後と比較的早く現れます。その為、栄養補給剤というより、むしろパフォーマンスを向上させる薬品のような印象を持たれる場合もあります。

しかし、現在までのところ、クレアチン摂取による深刻な健康被害は報告されておらず、安全でしかも比較的安価なサプリメントだとする見方が一般的です。

注意点 ― 適量を守り、継続すること

それでも、人によっては、クレアチンを摂り始めた時期(特にロード期間)に下痢をするなど、消化器系に問題が生じる場合があります。

体調に問題がない人でも、必要量以上のクレアチンを体内に入れても、筋肉への効果は増えないこともわかっています(*3)。

またクレアチンは摂取し続けないと、せっかく増量した分は体内から消えてなくなってしまいます。ある研究(*4)では、クレアチンのサプリメント摂取をやめてから約4週間後に体内のクレアチン・レベルは摂取前のレベルに戻るということです。

 

参照文献:

*1.

Effect of creatine and beta-alanine supplementation on performance and endocrine responses in strength/power athletes.

Hoffman J. et. al, 2006

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17136944/

 

*2.

Nutritional supplement use among college athletes and their sources of information.

Froiland K. et. al., 2004

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15129934/

 

*3.

Creatine and its application as an ergogenic aid.

Greenhaff P.L. et al., 1995

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7550252/

 

*4.

Effect of creatine supplementation on intramuscular TCr, metabolism and performance during intermittent, supramaximal exercise in humans.

Febbraio M., et.al., 1995

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8719258/

 

角谷剛(かくたに ごう)

コメント一覧

全1件のコメント

  1. 2020年9月17日 15:30

    […] つまり、筋肥大のためのたんぱく質(プロテイン)、瞬発力アップのためのクレアチン、筋肉疲労からの回復を助けるためのアミノ酸系サプリメントでした。 […]

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