マラソンの自己ベストを更新するには

マラソンを走る人にとって自己最高タイムを更新するには何をするべきかというのは永遠のテーマです。サブ4、サブ3、目標タイムは人によって様々ですが、ただ42.195キロを完走するだけでは満足できず、自分が設定したタイムより1秒でも速くゴールするために努力する人をマラソン・ランナーと呼びます。

そのトレーニング量を示す指標として、月間走行距離がよくランナーの間でよく使われます。サブ3を目指すなら月に300キロ以上走らなくちゃダメだよ、などというような話をよく耳にします。

また、マラソンは体重が軽い方が有利なスポーツだと信じられていますので、自分の体重を気に掛けるランナーは多いです。体重が1キロ減ったらフル・マラソンのタイムは3分速くなる、なんて都市伝説がまことしやかに囁かれたりします。

確かにエリート・レースや駅伝に出場するような競技ランナー達は月に300キロどころか1000キロ以上走ることもあると言われていますし、どのランナーを見ても極限までスリムな体型です。あれには遠く及ばないにしても、少しでも近づこうとするあまり、走行距離を伸ばし、体重を減らそうとする市民ランナーが多くいるのは無理もありません。

ですが、市民ランナーが本当に気にするべきなのは、トレーニングで走った距離ではなくスピード、体重ではなく体脂肪率なのだという調査結果を発表した論文を紹介します。

論文の背景、調査方法について

この論文を発表したのはスイスにあるチューリッヒ大学の研究グループです。元々はウルトラ・マラソン・ランナーとフル・マラソン・ランナーの比較をすることが研究の目的でした。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3781899/

調査方法は2010年と2011年にスイス・バーゼル=シュタット準州のバーゼル市で行われたフル・マラソン・レースを完走した126人の男性市民ランナーを対象にして、レース前日に計測した様々な人体計測データ(年齢、体重、身長、体脂肪率、皮下脂肪など)とレース前のトレーニング内容(距離、スピード)の組み合わせをフル・マラソンのタイムとの関連性について調べたものです。

126人のランナーの平均年齢は42.8歳、平均タイムは3時間51分でした。男性ランナーに限定されたのは、調査に応じた女性のランナーの数が少なく、充分なサンプル数と認められなかったためです。

結論

調査研究の結果、フル・マラソンのタイムを決める最も大きな要因はトレーニング中のランニング・スピードと体脂肪率であると結論づけられました。

論文はフル・マラソンのタイムは以下の計算式によって予測することが出来るとしています。

フル・マラソンのタイム(分) = 326.3 + 2.394 x (体脂肪率、%) –  12.06 x (トレーニング中のランニング・スピード、km/時)

筆者自身のデータに当てはめてみると

上の計算式に実際に筆者のデータ変数を当てはめて、フル・マラソンの予測タイムを算出してみました。筆者のフル・マラソンのベストタイムは3時間半です。もっとも、このタイムを出したのは、もう6年前にもなります。その後も毎年1,2回ぐらいの頻度でレースに出続けてはいますが、いつも3時間40分から4時間ぐらいまでのタイムしか出せていません。

普段の体脂肪率は10%ぐらい。レース直前には7~8%ぐらいまで落ちます。

トレーニングでは時速10キロぐらい(1キロ6分)のジョギング・ペースで行うことが最も多いです。

そこで、データ変数に体脂肪率8%と時速10キロを使って計算してみた結果は約3時間45分でした。まさに今の筆者のタイムにぴったりです。

326.3 + 2.394 x (8) –  12.06 x (10) = 224.85

目標タイムから逆算してみると

筆者の目標は自己ベストを5分短縮する3時間25分、つまり205分です。なぜなら、それが現在52歳である筆者がボストン・マラソンに出場資格を得られるぎりぎりのタイムなのです。それでは、その目標タイム3時間25分を達成するにはどうすればよいのか、上の計算式を使って逆算してみました。

体脂肪率を8%のままで維持すると仮定して、トレーニング中のランニング・スピードを時速10キロ(1キロ6分ペース)から11.66キロ(1キロ5.14分ペース)に上げると、205分をぎりぎりで達成できます。

326.3 + 2.394 x (8) –  12.06 x (11.66) = 204.83

逆にランニング・スピードが時速10キロ(1キロ6分)のままでは、体脂肪率を3%まで絞ったとしたも(現実には不可能ですが)、タイムは3時間半を越えてしまいます。

326.3 + 2.394 x (3) –  12.06 x (10) = 212.88

もともと筆者の場合は体脂肪率を現在より大幅に下げるのは実際には困難ですし、それをしてしまったら、かえって体に悪そうです。それよりも、トレーニング中のペースをもう少し上げることがタイム短縮への理にかなった方法だということになります。もともとがジョギング・ペースでの「緩い」練習が中心でしたので、さほど厳しいというわけではありません。

調査結果から見えてくるもの

調査対象となったのは男性の市民ランナーレベルですので、上の計算式が誰にでも当てはまるとは限りません。ですが、月間走行距離をやみくもに伸ばしたり、あるいは体重を落とすために無理なダイエットをしたりする前に、一度立ち止まって別の角度からトレーニング内容を見直してみると、自己ベスト更新への意外な近道が見つかるかもしれません。

[筆者プロフィール]

角谷剛(かくたに・ごう)

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