
一日のうちどの時間帯に走るのがよいかとはランナーの間でよく話題になります。聞くところによれば、実業団などに所属するエリートランナーたちは早朝にジョギングをして午後に本格的な練習を行うようです。しかし、市民ランナーたちはそうはいかないでしょう。時間の制約も勿論ですが、そもそも1日に2回走ることは体力的にも無理があります。1日に1回しか走ることが出来ず、日中は仕事や学校があるのであれば、朝に走るべきか、それとも夜に走るべきか、どちらかを選ぶことになります。
減量効果
朝走ることを勧める人の多くが減量効果を口にします。朝起きたばかりの体は空腹でエネルギーに乏しいので、その状態で走ると脂肪を燃焼しやすくなり、その結果として体重を落としやすい、あるいはコントロールしやすいという理屈です。
ベルギー最高学府として知られるルーヴェン・カトリック大学の研究グループが発表した下の論文ではそのような説を後押ししています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20837645
18歳から25歳までの健康な男性を空腹状態でエクササイズするグループ、通常の状態でエクササイズするグループに分け、6週間に渡って週4日のトレーニング期間を観察すると、空腹状態のグループにグルコース耐性に顕著な改善効果が確認されました。グルコース耐性の改善は血糖値の上昇とインシュリンの分泌を抑えることに繋がりますので、結果として体の脂肪率を下げ、体重を減らす効果があるでしょう。
朝の時間に走ると体重を減らしやすいという説は信じるに足るようです。ただし注意してもらいたいのは、上の研究は朝か夜かといった時間帯ではなく、空腹状態かどうかで分析したものだということです。従って、寝る直前にドカ食いをしたり、睡眠時間が極端に短い人は、朝起きたばかりでも空腹になっていない可能性がありますので、この例にはあてはまらないかもしれません。
パフォーマンス面
それでは朝走ると走力は上がるのでしょうか? それについては否定する説が主流のようです。
チュニジア共和国の国立スポーツ医学センター(CNMSS)が発表した下の論文によれば、人の運動能力が最適化されるのは体温が1日で最も高い時間帯であり、多くの人にとってはそれは午後4時から7時頃にあたるということです。
https://insights.ovid.com/crossref?an=00124278-201207000-00033
つまり、最も質の高い走りが出来るのは夜の時間であり、朝の時間に走るのはスピードが乗らなかったり、持久力が低下した状態で練習を積んでいるのだということになるようです。
競技と練習時間の関係
同時に、上の論文は本番の競技が行われる時間帯と練習をする時間帯をなるべく合わせることも奨励しています。人の体には24時間のサイクルがあり、その体内リズムに合わせて注意力、血圧、体温、代謝などの生理機能が調整されるからです。
市民マラソンの殆どは午前中に行われますので、その意味では市民ランナーは普段から朝走る方が理にかなっていると言えるようです。逆に野球やバスケットボールなど午後や夜に試合が組まれることが多い競技のトレーニングとして走るのであれば、夜の方が良いかもしれません。
まとめ
朝走るべきか、夜走るべきか。この問いへの答えはランナー1人1人の目的によって変わってくるようです。痩せたいために走るなら朝、質の高い練習をしたいなら夜、本番レースが決まっているなら、そのレースの時間帯に合わせて決めるとよいでしょう。
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